苓桂朮甘湯

めまいに対する苓桂朮甘湯の活用術
いまなか耳鼻咽喉科 院長 今中政支先生
http://www.tsumura.co.jp/password/magazine/176/insho.htm



◆五苓散の著効例をきっかけに漢方の世界へ
平成18年、二日酔いに苦しむ私に
小児科部長は二袋の五苓散をくれました。
そして、服用後10分もたたないうちに
頭痛や嘔気、胃もたれ、さらには下痢も嘘のように軽快したのです。
長く飲まないと効かない、いや、その効果すら疑わしいと思っていた漢方薬
劇的かつ即効に効いたので、私は大変驚きました。


外来で、恐る恐る五苓散を処方してみると
抗めまい薬の服用を3年間続けていてもめまいが治らなかった患者が
一週間で治ってしまいました。


五苓散は、茯苓、沢瀉、猪苓、水をさばく生薬をパワフルに揃えています。
さらに胃を強くして、水を乾かす白朮と、気を巡らせる桂枝
その名の通り、この五つの生薬で構成されています。


苓桂朮甘湯は、五苓散と茯苓、桂枝、白朮は共通で、胃を守り、諸薬を調和
さらに自律神経調整作用もある甘草、四つの生薬から成り立っています。





◆めまいに対する頻用薬、苓桂朮甘湯の活用術
私の実際の急性期の回転性めまいに対する対応です。
まず、めまいで嘔気・嘔吐がみられる場合
五苓散を2包、必ずお湯に溶いて、さらに少し冷やして、ゆっくり服用させます。
もし嘔吐したら、15分後に再度服用させます。
続けて嘔吐することはまずありません。


その日の処方はツムラ苓桂朮甘湯7.5gに高砂天麻末3gを加える。
これを患者さんの都合にも合わせて4〜7日分
それから嘔気時の頓服として五苓散二袋を三回分ほど持たせます




良性発作性頭位めまい症
その名の通り、頭位変換によって誘発されるめまいです。
聴力低下は伴いません。


一方、メニエール病には必ず聴力の低下を認めます。
私は、抗めまい薬を敢えて使わず、苓桂朮甘湯単独で加療を試みて来ましたが
抗めまい薬よりもよく効くということを数え切れないほど多数経験しました。


次に述べる五人の良性発作性頭位めまい患者に
苓桂朮甘湯をまず処方してみることは妥当だと思います。
ただし、全員等しく効くことは保障出来ません。