漢方薬で綺麗になる

単純・明快・納得 漢方
木下優子先生(日本大学医学部附属板橋病院緩和ケア室 室長)
第63回 日本産科婦人科学会総会スポンサードワークショップ2
http://www.tsumura.co.jp/password/magazine/153/index2_jsog_02.htm


加味逍遙散は更年期症候群の頻用処方

木下先生は産科婦人科で頻用される漢方薬について講演した。
女性のための3大処方として
冷えやのぼせなど気逆に効果がある加味逍遙散
クマができるなど瘀血に効果がある桂枝茯苓丸
冷えやむくみなど水毒に効果がある当帰芍薬散が挙げられる。


加味逍遙散は症状が逍遙する人(不定愁訴)に用いる更年期症候群の頻用処方である。
疲れやすい、眠れない、なんとなくつらい
イライラする、不安になる、冷えやのぼせがあるといった症状に適応となる。
加味逍遙散を用いても、のぼせ、めまい、固定愁訴がある場合は
女神散の併用もしくは変更を考える。
唇の乾燥、手のほてりがある場合は温経湯
腰から足にかけての冷えや痛みがある場合は五積散の併用もしくは変更を考える。
ただし、加味逍遙散は構成生薬が10種類と多いため
基本的には他の漢方薬を足さないで使用することが多い。


桂枝茯苓丸は打撲や骨折、子宮内膜症、月経困難症など血の停滞を改善する漢方薬である。
また子宮筋の緊張を促す可能性があるため妊娠中は禁忌となる。
適応症状はのぼせを伴う月経不順、肩こり、頭痛、ニキビ、下腹の張りや痛み
臍の下の膨隆や圧痛、クマがある、舌や唇が暗紅色である。


桂枝茯苓丸は加味逍遙散や当帰芍薬散に追加することがある。
また、小柴胡湯・柴苓湯など柴胡剤との併用
八味地黄丸・牛車腎気丸などの補腎薬との併用もある。


当帰芍薬は元々、妊娠時の腹痛の薬で
妊娠高血圧症候群や悪阻など妊娠中に使用できる。
貧血やめまい、疲れやすい、冷え性などにも適応がある。
また、水分のバランスをとる作用を有する。
当帰芍薬散を強化する方剤としては、取り切れないむくみがある場合は五苓散
芍薬を増やしたい場合は芍薬甘草湯、胃痛がある場合は六君子湯
疲れがひどい場合は補中益気湯、冷えがひどい場合はブシ末
貧血がひどい場合は四物湯、出血が止まらない場合は芎帰膠艾湯
抑うつ気分がある場合は香蘇散の併用を考える。


浮腫やめまいなど水の貯留を考えさせる症状や、尿量の減少がなく、手足の冷え
冷えた時の急激な腹痛や頭痛、性交痛がある場合は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を考える。


腸管の動きが多いまたは少なく、冷えて痛む、体の芯が冷える
冷えて体調不良がある場合は大建中湯を考える。

コンプライアンス向上には“飲み続けると綺麗になる”

月経困難症については病態の中心に血の巡りがあり
いかにしてこれを改善するかがポイトとなる。
中心となる方剤は桂枝茯苓丸だが、むくみがある場合は当帰芍薬
イライラがある場合は加味逍遙散、冷えが強い場合は当帰四逆加呉茱萸生姜湯を考える。
月経中だけでなく毎日服用させる。


月経痛については、筋肉の痙攣による痛み、ひきつれるような痛みがある場合は
芍薬甘草湯、冷えのある時の痛み、頭痛、胃痛がある場合は、呉茱萸湯を考え
月経中だけ桂枝茯苓丸を追加する。


月経前緊張症については、ストレスなどメンタル面の不調がからむことが多くなるので
加味逍遙散を処方することが多くなる。
月経前だけニキビが出たり腹痛が出たりするタイプには桂枝茯苓丸
イライラ感が強くなるタイプには桃核承気湯に処方変更あるいは追加する。
ストレスで胃痛がある場合は安中散
ストレスで気持ちが落ち込んでいる場合は香蘇散を併用する。


ストレスや不定愁訴については、代表処方として加味逍遙散がある。
抑うつには香蘇散、神経質、几帳面、喉のつかえには半夏厚朴湯
テストであがるなど緊張には抑肝散を用いる。


妊娠中に使用できる漢方薬としては
不育症に柴苓湯、当帰芍薬
妊婦の風邪に香蘇散、桂枝湯、麦門冬湯
出血に芎帰膠艾湯がある。


妊娠悪阻には香蘇散、茯苓飲合半夏厚朴湯、小半夏加茯苓湯、五苓散などを用いる。


最後に木下先生は服薬コンプライアンスを向上させる工夫として
「皮膚が乾燥して荒れる、髪の毛がばさばさ、爪が割れるのは血虚
くまができてしまった、肌がくすんでいるのは瘀血に起因するため
漢方薬を飲み続けると綺麗になると患者に説明すると、よく服用するようになる」
と講演を締めくくった。


Key Word
つわり かみしょうようさん けいしぶくりょうがん とうきしゃくやくさん