3D成形、医療に活用

3D成形、医療に活用 患者ごと 高精度
ナカシマが阪大と手術器具開発 ネクスト21は東大と組み人工骨
http://www.nikkei.com/article/DGKDZO61600400V21C13A0TJ2000/



産学連携で医療分野に3Dプリンターを活用する動きが広がっている。
人工関節メーカーのナカシマメディカルと大阪大学は、
患者の変形した骨に合わせた手術器具を開発、
手術時の精度を高めて時間も大幅短縮する。
医療機器開発のネクスト21は東京大学などと組み、
3Dプリンターで成形する人工骨を実用化。
患者の体に合わせた医療機器の普及で、患者の負担軽減が進みそうだ。


骨折などで変形した骨を治療するには、骨を切断する手術が必要となる。
ナカシマメディカルと阪大が開発した手術器具は、
骨を切断するためのガイド器具を3Dプリンターで作る。
新しい器具を使うとどこを切断すれば良いかが分かるため、
通常2時間以上かかる手術が40分で終わる。


器具を作製するにはまず、CT画像から変形した骨の立体モデルを作成する。
そのデータを基に3Dプリンターで樹脂を成形して器具を作る。
これまでは医師が経験と勘で骨の曲がり具合を想像し、
既製品のプレートから合うものを選んで骨を切断してきた。


このほど、新しい器具を用いた腕の手術が厚生労働省に承認され、
足の手術向けでも承認審査中だ。
ナカシマメディカルは経済産業省の支援を受け、
政策シンクタンクのJIGHと共同で香港やシンガポールでも富裕層向けに販売を始める。


ネクスト21と東大、理化学研究所が共同開発した人工骨は、
リン酸カルシウムを材料に3Dプリンターで積層して作る。
事故や先天的な病気による骨の欠損や変形の治療に使う。
年内に製造販売承認を申請し、2014年には実用化を目指す。


CTで撮影した画像から、
患者一人ひとりに合わせた骨を誤差1ミリメートル以内で作製できる。
顔面など骨の形が見えやすく、高い精度が必要な部分の治療に活用する。
従来は自分の体から取り出した骨を削って、
患部にはめ込んでいたが、正確に削るのが難しかった。





3Dプリンターで患者の臓器を再現するメーカーもある。
北陸先端科学技術大学院大学の川上勝准教授らはベンチャー
スタジオミダスと組み、MRIのデータを基に肝臓と腎臓の立体模型を作製した。
外科手術のシミュレーション用で、外科手術の手順を決める際などに役立てる。


3Dプリンターの特徴は3次元の設計データがあれば、
樹脂などの素材を積み重ね、複雑な立体構造物を作れることだ。
最近では装置の性能向上や低価格化、
造形材料の多様化で活用の場が徐々に広がっている。
その中でも注目を集めるのが医療分野。
患者ごとに体形やけがの状態に合ったものを作製できるため
従来品より治療効率や装着時の快適さを高められる。


例えば、海外では失った足にそっくりな義足などの開発、実用化が進んでいる。
欧米では耳の形に合った補聴器や歯科矯正用のマウスピースなどの利用が広がっている。
ただ、現状では従来品より割高でコスト低減が欠かせない。


日本の医療分野で普及するには、
薬事法の承認を得るために製造方法や材料の安全性の検証が課題。
3Dプリンターは安全性を検証する際の基準が明確になっていない。
安全基準などの整備を早急に進めないと
先行する欧米企業などにさらに後れを取る恐れもある。