無尽蔵の資源 水素

水素社会(上) 無尽蔵の資源 水素が主役
燃料電池車に安定供給
http://www.nikkei.com/article/DGKDZO61487150T21C13A0TJ2000/



水素をエネルギー源に利用する「水素社会」の到来が近づいてきた。
トヨタ自動車やホンダは2015年に日米欧で水素を燃料に使う燃料電池車の市販を始める。
水素を量産し安全に貯蔵・輸送する技術の開発も進む。
水に含まれる水素は環境に優しい無尽蔵のエネルギーだ。
特に資源が乏しい日本にとって水素技術は今後、一段と重要になりそうだ。


燃料電池車は技術的には市場に投入できるレベルにほぼ達している」。
トヨタの製品企画本部の田中義和主査は今月8日、
都内で初公開したセダン型燃料電池車の試作車を前に胸を張った。
試作車は航続距離が約650キロメートルと電気自動車(EV)の3倍程度。
愛知県豊田市トヨタ本社から東京都の晴海埠頭まで
約320キロメートルを燃料充填なしに走ってきた。


次世代エコカー燃料電池車は
水素と酸素を化学反応させて電気を取り出しモーターを回して走る。
15年時点での販売価格は500万円台とされる。
日本の自動車業界では25年に国内で累計200万台の販売を目指している。


水素は家庭用の燃料電池や水素発電所でも使われる。
重要なのは輸入の化石燃料に頼る日本にとって
水素が将来的に国内で自給できる可能性があるエネルギーであることだ。
化学工場などでも大量に発生する。
太陽光発電など再生可能エネルギーのコストが下がれば
水を電気分解し取り出しても商業利用できる。
日本は長年、水素分野で研究開発を続けており幅広い技術で先行できそうだ。


日経BPクリーンテック研究所によれば、
水素インフラ市場は30年に約37兆円になる見通し。
このうち、燃料電池車は約7兆円で、世界で350万台が販売される。
水素ステーションなど周辺インフラの整備は22兆円超の巨大市場になるという。
日本も政府がステーションの建設費を補助し、
15年度に100カ所、25年度には1000カ所に増やす計画だ。


「水素の製造から供給まで一貫して手掛けていく」と、石油元売り最大手、
JX日鉱日石エネルギーの斎藤健一郎研究開発企画部長は強調する。


同社は16年度以降、
各地の製油所に水素製造装置を設置し、全国への燃料供給体制を整える。
製油所では大量の水素が発生するが、不純物の除去が難しい。
独自の分離膜技術で100%に近い高純度の水素燃料を生産する。
燃料電池内部の部材の消耗を抑えられる。


BPクリーンテック研究所の菊池珠夫主任研究員は
「水素社会を早期に実現するためには、水素のコストを大幅に下げる技術が重要だ」と語る。