好酸球性副鼻腔炎

ポリープ・鼻づまり…好酸球副鼻腔炎、再発に注意
点鼻薬や洗浄でケアを
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO66759920T10C14A2EL1P01/



慢性副鼻腔炎の一種で、再発を繰り返す「好酸球副鼻腔炎」の患者が増えている。
詳しいメカニズムは不明だが、ぜんそくの患者は注意が必要だ。
ステロイドで抑えても再発のリスクがあり、日ごろのケアが欠かせない。


東京都に住む40代男性のAさんは、右目の周囲の痛みに悩んでいた。
耳鼻咽喉科を受診すると、鼻の穴の奥に、
鼻茸(はなたけ)と呼ばれるポリープがあることが発覚。
抗アレルギー剤などを内服したが改善が見られず、
CTや血液検査などから好酸球副鼻腔炎と診断された。


◆都市の住民に多く
好酸球副鼻腔炎は、
鼻汁や血中に白血球の一つ、好酸球が多くみられることからこう呼ばれている。
鼻の周りにある副鼻腔という骨の空洞で炎症が起こる。
特徴は両方の鼻の穴の中に鼻ポリープができる。
鼻詰まりになったり、臭いのする鼻汁がでたりする。


患者は鼻ポリープの影響などで嗅覚障害がある。
患者の中には「治りの悪い鼻炎だと思っていたが、臭いが分からない」
と気になって病院を受診し、好酸球性と気付く例もある。


患者は増えているようだ。
順天堂大学池田勝久主任教授は
「慢性副鼻腔炎に占める割合は27%と20年前の倍」と指摘する。
東京慈恵会医科大学の松脇由典講師は
「(同大では)慢性患者のうち半分は好酸球性」という。


全国では3〜4割といわれるが、
国内外ともに都市の住民に多く報告されており、環境の影響も大きいようだ。
患者のほとんどは20歳以上で男性の方が多い。


診断では両方に鼻ポリープがあるか調べる。
大きくなって患者本人が気付くときもあるが、
ふつうは外からは見えず、自分で触ってみても分からない。
片方だけにできた場合は真菌による病気
「アレルギー性真菌性副鼻腔炎」などの場合があるという。


鼻ポリープがあっても好酸球性でない場合もある。
そのため血中や鼻汁中の好酸球の濃度を測り、一定以上の高さか確かめる。
鼻をCTで撮影して、副鼻腔の状態を確認して総合的に診断するのが一般的だ。
厚生労働省の研究班が診断基準をまとめているが、学会などのガイドラインはまだない。





治療法はまずは薬の投与だ。
軽症では点鼻薬で鼻の中を洗ったり、ステロイド薬を鼻にスプレーしたりする。
通常の副鼻腔炎抗生物質で治すが、いつまでも改善しなければ、
好酸球副鼻腔炎の疑いがある。
点鼻薬での洗浄も治療法の1つで、
それだけでも再発までの期間を延ばす効果が報告されている。


重い症状では、ステロイドの内服が基本だ。
副作用があるので様子を見ながら使うが、1カ月程度が多い。
鼻ポリープが小さくなる効果がある。ただ投薬をやめるとまた大きくなる場合が多い。
そのときは手術を考える。


◆風邪や乾燥が大敵
手術は内視鏡を使う。
全身麻酔のため入院期間は1週間程度かかる。
鼻ポリープなどをとるほか、副鼻腔に壁のようにある骨を削り取る。
分泌物を取り除きやすくして、患部に薬が届きやすくするためだ。
獨協医科大学の春名眞一教授は
「手術は病気を根絶するためのものではない。次の炎症を防ぐためのもの」と話す。


慢性副鼻腔炎との大きな違いは再発しやすい点だ。
鼻ポリープを取り除いても、薬をやめると再びできてしまう。
順天堂大学の池田主任教授は
「手術後1年以内で20%、6年で約50%の再発率」という。
アレルギー体質やぜんそくなどを伴う患者は再発しやすく、
特にアスピリンに反応してぜんそくを起こす患者はほとんど再発するという。


再発はかぜをひいた後などに臭いが分からなくなることなどで気付くようだ。
再発時も点鼻薬での洗浄やステロイドを使う。
重症患者では手術から3年たっているといった条件を満たすときには
再手術で鼻ポリープなどを取り除く場合もある。


詳細な発症メカニズムは分かっていないが、
アレルギーや何らかの免疫反応で好酸球が大量にできる。
ぜんそくとの関係は深く、
好酸球副鼻腔炎の患者の8割がぜんそく予備軍だったという報告もある。
重症患者に使うぜんそく薬を投与すると好酸球副鼻腔炎が治る例や、
鼻ポリープを治すとぜんそくの症状が良くなる例もあるという。
ぜんそくを含めて好酸球がかかわる呼吸器障害といえるようだ。


鼻づまりがいつまでも治らず、しかも嗅覚障害が表れたら、
かかりつけの耳鼻咽喉科などを受診しよう。
重症になった場合は専門医を紹介してもらう。


再発予防には毎日のケアが欠かせない。
点鼻薬の使用や鼻を清潔に保つ日課のほか、粘膜を傷める風邪に気をつける。
乾燥も大敵で、寝るときもマスクを着ける方がいい。
春名教授は「この病気になったら、一生付き合う。
手術後のケアが大事で医師だけでなく患者も意識してほしい」と話す。