「インフルエンザ=麻黄湯」ではない

証と病期に合わせた処方が基本
「インフルエンザ=麻黄湯」ではない
動悸や排尿障害が生じたら服薬中止の指導も
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201310/533088.html



インフルエンザ患者に漢方薬を処方する医師が増えている。
特に、麻黄湯はインフルエンザの症状改善に一定の効果が確認されており、
保険適応上も使用に問題がないため、使用する医師が少なくないようだ。
ただし、「そもそも漢方薬は、患者の証に合わせて処方すべきもの。
インフルエンザなら一律、麻黄湯ではないことを理解してほしい」――。
慶應大学漢方医学センター兼担教授の渡辺賢治氏は、こう注意を喚起する。


渡辺氏は、
麻黄湯は強い発汗作用から、体力があり胃腸が丈夫な患者に適している。
そのような患者に処方すれば、解熱効果も高く、通常2日で解熱する」と説明する。


一方、
「虚弱な患者に処方すると、過度の発汗を生じ治りにくくするだけでなく、
患者の体力を消耗させてしまう」と説明する。
そのため、体力のない高齢者には基本的に処方すべきではないとの考えだ。
さらに「麻黄湯を安易に1週間程度処方する医師もいるが、
最長で3日間の処方にとどめるべき
」と強調する。


インフルエンザを含む感冒への漢方治療では、
「症状が出てからどれくらいたっているか」と、
汗をかいているか」が重要なポイントとなる。
麻黄湯は、本来、実証(体力があり、抗病力充実)の患者の病初期に適応を有する。
それ以外の病態や病期の患者には、他の漢方薬が選択肢に入ってくる。


病初期で汗をかいている虚弱な患者には桂枝湯が、
高齢者や寒気が長引く患者には麻黄附子細辛湯が勧められるという。
さらに、病中期で熱が収まったのちも咳や食欲不振などがある場合には
他の漢方薬小柴胡湯や麻杏甘石湯など)に切り替えることを勧める。


漢方薬の飲み方として、
熱湯に溶かし、人肌程度に冷ましてから飲ませること、
解熱剤との併用は、熱を上げようとする漢方の働きを抑えるので好ましくなく、
抗菌薬との併用も、腸内細菌が変化して漢方薬の効果がうすれる可能性があり、
明らかな細菌感染を伴う場合以外は避けるとよいだろう」とアドバイスする。


麻黄湯服薬後、一過性に40℃近く発熱することがあるが、
通常、発熱は長引かないので解熱剤の服用は必要ないという。
一方、発熱が長引く場合は、脳炎や肺炎など他の疾患を疑ってほしいと話す。


日本東洋医学会はインフルエンザへの麻黄湯の一律処方を危惧し、
昨年1月末、医療者向けに、
「インフルエンザに対する麻黄湯使用上の注意」を発表している。


その中で、麻黄湯には交感神経刺激作用があること、
普段から体力があり、発熱しても汗をかかない患者が適応となること、
また、その薬理作用から、高血圧、虚血性心疾患、
緑内障前立腺肥大症の患者には特に注意すべきことなどが示された。


渡辺氏は、「麻黄湯の服薬で、血圧や脈拍が上がって動悸が生じる場合がある。
証が合っていればこのような症状はまず生じないが、
もし、服薬後に動悸や尿の出が悪くなったら直ぐに服薬を中止するよう、
処方時に指導しておくといいだろう」と言う。