ツムラ 漢方スクエア
教育講演
呼吸器・アレルギー疾患に対する随証漢方治療のポイント
伊藤隆先生 (鹿島労災病院和漢診療センター センター長)
http://www.tsumura.co.jp/password/magazine/165/index2_01.htm
アレルギー性鼻炎に対する漢方処方としては
越婢加朮湯、小青竜湯、麻黄附子細辛湯などを頻用する。
これら方剤には、抗炎症作用、抗アレルギー作用を有する麻黄が含まれる。
麻黄は実証には多く、虚証には少なく用いられるのが特徴である。
越婢加朮湯には石膏が含まれており、熱をさます効果も有する。
くしゃみや鼻水のひどい症例、花粉症の急性期に用いる。
小青竜湯はアレルギー性鼻炎に用いる代表的な方剤である。
麻黄附子細辛湯はアレルギー性鼻炎以外にも
慢性閉塞性肺疾患(COPD)など繰り返す気道感染に頻用する。
アレルギー性鼻炎症例を2例提示する。
- 52歳女性
主訴はくしゃみ、鼻水(花粉症)。2年前から悪化し、点鼻薬など無効。
3月中旬に受診、マスクを片時も外していられない。
この症例に越婢加朮湯エキス2回分を湯50mlにて服用させたところ
30分後に左鼻詰まりがとれた。
服用毎に軽度頭痛が起こるものの、症状は軽快し
6日後にマスクを外すことができた。20日後に休薬した。
翌年3月に症状が再燃したが、2週間処方し、軽快に至った。
- 33歳女性
主訴はくしゃみ、鼻水(花粉症)。
6年前の引っ越しにより毎春、くしゃみ、鼻水がひどい。
花粉症以外に不都合なことはなく、3月に受診。
この症例に小青竜湯エキス(3包分3食前)を4週間処方したところ、症状軽快に至った。
アレルギー性鼻炎などに対する漢方処方は
試服で1例ごとのevidenceを確認することを推奨する。
具体的には
1) 2包を1度に服用させ、30分様子をみる。
2) 証に合っていれば症状の好転反応をみる(かぜ、鼻炎、咳、喘息発作など)。
3) 場合によっては2回目も行う。2包を湯に溶かして服用する。
4) 服薬指導にもなる。麻黄の副作用を早期にチェックできる。
5) 2回で無効であれば西洋医学的に対応する。
などである。