アレルギー性鼻炎(花粉症)と漢方

アレルギー性鼻炎(花粉症)と漢方
境修平先生 なのはな耳鼻咽喉科 院長
https://www.kampo-s.jp/web_magazine/back_number/377/allergy-377.htm

青竜湯の特徴
アレルギー性鼻炎に適応のある漢方薬として代表的なものが小青竜湯です。
アレルギー性鼻炎診療ガイドラインCQでも小青竜湯の使用は推奨されており、
西洋薬と同じ土俵にのったといえるでしょう。

麻黄: 解表作用。風寒の邪をとりさる
桂皮: 麻黄と合わせると強力な発汗解表作用を示す
細辛:\、乾姜、半夏: 体を温め余計な水を排出する
芍薬、五味子: 肺気を収め咳を治す
甘草: 諸薬の調和

症例1
10歳女児。主訴は慢性的な水様性鼻漏です。
他院でアレルギー性鼻炎と診断され、
ヒスタミン薬、ロイコトリエン拮抗薬、ステロイド点鼻処方されるも軽快せず
咳嗽もひどいため、別の治療はないか? とのことで受診されました。
身長131cm、体重29kgとやや痩せ型。鼻粘膜は蒼白で軽度浮腫状でした。
冷えがあり、食生活を伺うと清涼飲料水をよく飲むとのことでした。
西洋薬に反応しないのは冷えがあるためと考え
青竜湯5g分2で処方し、清涼飲料水を控えるよう指導しました。
投与2週後に来院したときには
「今までのことが嘘のように咳が止まった。鼻水も落ち着いてきた」
と大変感謝をされました。
このように西洋薬で治療が困難な場合も「冷え」に着目し、
食養生をするとともに体を温める効果のある小青竜湯を用いることで
うまく治療ができることがあります。


症例2
40歳代女性。
スギ花粉症に対して他院で抗ヒスタミン薬、
ロイコトリエン拮抗薬、ステロイド点鼻処方されるもコントロール不良であり、
ベタメタゾン・d−クロルフェニラミンマレイン酸塩を飲まないと駄目というものでした。
身長156cm、体重50kgで鼻粘膜は蒼白浮腫状でした。
内服、点鼻をしているにも関わらず
鼻粘膜が蒼白浮腫状というのはかなりの冷えがある証拠です。
この方は内服薬が増えることには特に抵抗がなかったため
ヒスタミン薬、ロイコトリエン拮抗薬、ステロイド点鼻に加えて
青竜湯7.5g分3で開始したところ、症状コントロールが良好となり
スギ花粉症の時期を乗り切ることができました。


青竜湯は
アレルギー性鼻炎に用いられる漢方薬の中では
もっとも使いやすい方剤です。
特に何かに偏ることなくバランスがよいのが特徴なので、
とりあえずアレルギー性鼻炎漢方薬を使ってみたいという人にはまずは試してみてよいお薬です。
ただし麻黄が入っているので心血管障害や重度の高血圧、
甲状腺機能亢進症の方に投与することはあまりお勧めしませんので、
高齢者に使う際には既往歴の確認が重要となります。