咳漱治療における漢方薬の役割と処方
田中 裕士 先生
(NPO法人札幌せき・ぜんそく・アレルギーセンター 理事長/医大前南4条内科 院長)
http://www.kampo-s.jp/magazine2/194/topics2_2.htm
麦門冬湯とその併用療法は遷延性・慢性咳嗽の改善効果が期待できる
『咳漱に関するガイドライン 第2版』(日本呼吸器学会,2012)
に掲載された鎮咳作用を有する漢方薬のエビデンスには以下が示されている。
麦門冬湯:COPD(レベルII)、感染咳漱(レベルII)
小青竜湯:軽・中等症の気管支炎(レベルII)
麻黄附子細辛湯:喉頭アレルギー(レベルV)
遷延性・慢性の咳漱に対する麦門冬湯、およびその併用療法を示す(図)。
基本的処方として麦門冬湯を単剤で使用し、病態によって併用療法を行う。
併用のポイントを示す。
小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯:
かぜをきっかけに遷延化し、花粉症などのアレルギー性鼻炎を伴う慢性咳漱に併用する。
冷え性で胃腸虚弱な体質(脈診:弱)では、
麻黄を構成生薬とする小青竜湯では合わない(副作用が懸念される)ので、
麻黄を含まない苓甘姜味辛夏仁湯を併用する。
麻杏甘石湯:
気管支拡張作用がある。喘息の基礎疾患があり、
たまたまかぜをひいた場合に出る咳漱に頓服の咳止めとして併用する。
柴朴湯:
湿性の喀痰が出る場合に併用する。
遷延化した喘息で湿性の喀痰を伴う咳漱などに併用する。
半夏厚朴湯:
喉が詰まった感じ(咽喉頭異常感症)の咳漱に併用する。