麻黄湯を使いこなす

小児のかぜ 中島 俊彦 先生
https://www.kampo-s.jp/web_magazine/back_number/321/index-321.htm



小児のかぜを漢方薬で治すとなると、ポイントは
「麻黄剤を自由自在に使いこなせるか」でしょう。
麻黄湯に始まり、小青竜湯、麻杏甘石湯、五虎湯、葛根湯、麻黄附子細辛湯
などにはすべて麻黄が含まれます。
頻用処方で麻黄が入っていないのは麦門冬湯、桔梗湯ぐらいでしょう。
ですから麻黄剤を適材適所にあてはめれば治療戦略としては十分です。
大人と違って、小児は麻黄剤を使っても適切に用いれば、
私の経験上ほとんど副作用を起こしたことはありません。
短期間に十分量を使って内服を中止することで、早く病状がよくなります。


A. 麻黄湯を使いこなす
「発熱」「汗をかいていない」「まだ元気がある」、
この条件が揃えば麻黄湯を使えます。急な発熱があれば、
寝ている時間を除き2時間おきに飲めるだけ(規定量の)を飲みます。


1. 解熱傾向(37.5℃以下)、
2. 汗をかく、
3. 排尿がある、
この3つのうち1つでも認められたら麻黄湯の内服は中止です(図1)。


通常は3、4回内服した時点で解熱することが多いようです。
麻黄湯単独で解熱傾向がみられないときは大青竜湯を使用します。
青竜湯はエキス剤にないので2つの漢方薬を併用することで近似処方を作ります。
全く汗をかいていない、煩躁があれば麻黄湯+越婢加朮湯(麻黄剤を重ねますので注意)です。汗を少しかいたが解熱しないときは桂枝湯+麻杏甘石湯です。これらも2時間おきに内服します。


B. 麻黄湯以外の麻黄剤を使う
「発熱」「鼻汁」「汗をかいていない」「項部の張り」、があれば葛根湯です。
のどの痛みには用いません。
葛根湯単独で解熱しないときは
葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏(=柴葛解肌湯)を使う手があります。
2時間おきに解熱するまで数回飲みます。
かぜをひいて発熱しているときに冷える、
疲労が重なった、寝不足、受験生などの状況では麻黄附子細辛湯が有効です。
これは1日3回内服で十分です。

※麻黄に含まれるエフェドリンに注意が必要です。大人ほど神経質になることは少ないですが、嘔気・嘔吐、動悸、手指の振戦などがあればただちに内服を中止します
B. 麻黄湯以外の麻黄剤を使う
いていない、煩躁があれば麻黄湯+越婢加朮湯(麻黄剤を重ねますので注意)です。汗を少しかいたが解熱しないときは桂枝湯+麻杏甘石湯です。これらも2時間おきに内服します。


C. 小柴胡湯を使いこなす
発熱のあるお子さんに麻黄剤を使って、
1日から2日以内に解熱することは日常診療でよく経験します。
解熱(37.5℃以下に解熱して24時間経過)した時点で麻黄剤は内服中止です。
麻黄剤を1日2日と飲んで解熱傾向があるものの、
往来寒熱(朝は平熱、午後、夕方から発熱)を見た時点で柴胡剤に変更です。
麻黄剤がカバーする病期を超えて、
柴胡剤が対応する病期にうつった(かぜがこじれた)と考えます。
ここからは熱の上がり下がりが続いても我慢強く柴胡剤を飲み続けます。
小柴胡湯柴胡桂枝湯が使いやすいでしょう。
発熱、嘔吐、咳嗽が目立つなら小柴胡湯
小柴胡湯の適応で扁桃の発赤・腫脹が著明、扁桃炎を繰り返す場合は小柴胡湯加桔梗石膏、
発熱、腹痛などオールマイティに対応できるのは柴胡桂枝湯です。
これらのなかから1つを選んで内服を続けます(図2)。