越婢加朮湯

NSAIDsの代わりになる漢方薬
新見正則帝京大外科准教授、愛誠病院漢方センター長)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/kanpo/201112/522752.html

整形外科的な痛みには越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)

適度な運動は気持ち良く、健康にも良いですが、一方で腱や筋肉を傷めたり
打撲したりと、整形外科的な痛みを伴うことも少なくありません。
このような整形外科的な痛みには麻黄を含む漢方薬が有効です。
葛根湯にも麻黄は1日量で3g含まれていますが、麻黄の量だけで判断すれば
痛みに対しては1日量で6gの麻黄を含む越婢加朮湯が最も重宝します。
麻黄のほか、石膏、蒼朮、大棗、甘草、生姜(しょうきょう)からなる薬で
腎炎やネフローゼ、リウマチに効果があると言われている薬です。
NSAIDsでも完全に楽にならないような痛みにも越婢加朮湯は著効します。
私が経験した例では、市民マラソンランナーでアキレス腱痛が残っている人や
テニス肘で苦しんでいる方に有効でした。
ただし、麻黄剤はエフェドリンが入っています。
ドーピング検査があるようなエリートランナーには使用できません。
ただし、一般人レベルであればNSAIDsとの併用で痛みが取れるため、喜ばれますし
その後に漢方薬だけの服用への移行も可能です。

虚証の方には桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)を

麻黄剤は、体ががっしりとした実証の方向けの薬です。
そこで、越婢加朮湯を飲むと不調が見られる虚証の人には
麻黄を含まない桂枝加朮附湯を処方しています。
桂枝加朮附湯は桂皮、芍薬、蒼朮、附子、生姜、大棗、甘草 を組み合わせた漢方薬
エキス剤は関節痛や神経痛、リウマチなどを効能にうたっています。
また、気力体力もつけたいときなどは人参と黄耆を含む参耆剤を処方します。
私は大防風湯(だいぼうふうとう)を気長に試してみることが多いです。
痛みだけでなく打ち身や打撲など腫れや皮下出血がある場合には
西洋医療的なアプローチに加えて桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を処方します。
桂枝茯苓丸は桂皮、芍薬、茯苓、桃仁、牡丹皮からなる漢方薬
血のめぐりを改善する効果があります。