テグレトール

笹嶋勝「クスリの鉄則」

テグレトール:過量による初期症状が出ても突然の休薬はNG

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/tessoku/201007/515948.html



カルバマゼピンテグレトール)は
てんかんの部分発作および三叉神経痛に対する第一選択薬です。
また、躁状態に対しても、リチウム製剤と同等の有効性、有用性を持ち
その効果の発現はリチウム製剤よりも早いという特徴があります。
さらに、糖尿病性神経障害、帯状疱疹後疼痛、癌性疼痛の鎮痛補助に
適応外処方されるなど、多方面で使用されます。


その一方で、重大な副作用の発現頻度が高いので要注意です。
しかも、てんかんに使用する場合には
急な減量によりてんかん重積発作を発症することがありますから
自己判断での中止は絶対にしないよう、患者にしっかり伝えなければなりません。

カルバマゼピンの特徴

カルバマゼピン自体は、CYP3A4で代謝されますが
CYP3A4をはじめとする代謝酵素を誘導する作用もあります。
この酵素誘導は、当初開始から1カ月くらいで終わりますが
その間、テグレトール血中濃度がなかなか定まりません。
ですから、カルバマゼピンを使用する際は、低用量から徐々に増量する必要があります。


また、何よりも、相互作用が非常に多いことが大きな特徴です。
添付文書の相互作用の欄には、併用に注意すべき薬剤が大量に記載されています。
おそらく、ここに挙がっている以外にも、検証されていないだけで
実際は相互作用を起こし得る薬剤は数多くあることでしょう。

過量のサイン

カルバマゼピンは相互作用の対象となる薬剤が多すぎて、完全にはチェックしきれません。
原則的には、カルバマゼピンを服用している患者に新たな薬剤が併用された場合
それがどのような薬であっても、カルバマゼピンとの相互作用が起こる可能性がある
と考えた方がよいと思います。


具体的に、どのような相互作用が起こるかも、併用薬によってまちまちですが
概してカルバマゼピン血中濃度が上昇する場合が多い印象があります。
ですから、新たに薬剤が併用された場合には
カルバマゼピン過量時のサインについて、しっかりチェックしましょう。


過量のサインについては、添付文書にも詳しく書かれています。

通常、服用1〜3時間後に現れる。
中枢神経障害(振戦、興奮、痙攣、意識障害、昏睡、脳波変化等)が最も顕著で
心血管系の障害(血圧変化、心電図変化等)は通常は軽度である。



具体的には、「振戦、興奮、嘔吐、ものが二重に見える」といった症状に、特に注意すべきです。
ただし、このような症状が出たからと言って、てんかんでの使用の場合には
すぐに服用を中止させるのはNGです。
前述の通り、急な減量により「てんかん重積発作」を発症することがあるからです。
過量のサインを発見したら、まずは医師と相談し、計画的に減量しなければなりません。

モニタすべき項目

カルバマゼピンの数ある「重大な副作用」の中でも「骨髄抑制」と「重症薬疹」が最も危険です。


骨髄抑制の副作用は、貧血、出血傾向、発熱などが初期症状とされますが
それよりも血液検査を頻回に行っているかどうかを確認する方が、薬局では現実的です。


重症薬疹(SJS、TEN)は『医薬品安全性情報 No.261』で報告されたように
アロプリノールに次いで2位の発症頻度です。
特に服用開始から数カ月間は、体の発疹に注意するように患者に注意を促し
発疹に気付いた場合には、すぐに相談するように伝えておくと良いでしょう。


このほか、頻度の高い副作用は、眠気、めまい、ふらつきです。
軽度であれば、一般に服薬を継続して問題ないでしょうが
車の運転をされる方などでは、危険を伴うこともあり得ますから
患者には事前に伝えておいた方が良いと思います。