今日、俺は窓口で、妊婦にデパケンとフェノバールを渡薬した。
妊婦は「第1子が無事に生まれたから次も大丈夫。葉酸も飲んでるし」と言った。
本当に大丈夫なのか? 俺はネットで調べてみた。
てんかんと妊娠・出産 (大日本住友製薬のサイト)
http://ds-pharma.jp/medical/gakujutsu/tenkan/tenkan01/conception/index.html#04
妊娠中の母親が全般強直間代けいれんを起こすと
胎児が低酸素状態になるのみならず、切迫流産、切迫早産の原因になりえます。
発作による流産は症例の1%くらいにみられます。
胎児への影響
抗てんかん薬を服用している女性から出生した児の奇形頻度は一般人口の児に比較して高率です。
患者群 | 出生数(例) | 出生時欠損(例) | 奇形発現頻度 | |
てんかん女性(全体) | 1,404 | 148 | 10.5 | |
てんかん治療群 | 1,099 | 122 | 11.1 | |
てんかん非治療群 | 105 | 6 | 5.7 | |
一般女性 | 85,361 | 4,081 | 4.8 |
てんかん女性では「抗てんかん薬の服用」によって
奇形頻度が2〜3倍に増えると考えられます。
抗てんかん薬を単剤で服用した場合に比べて
多剤併用した方が薬剤数の増加に伴って、奇形頻度が増加することが報告されています。
特にバルプロ酸ナトリウム(デパケン)とカルバマゼピン(テグレトール)
あるいはフェニトインとプリミドンとフェノバルビタールのような
特定の薬剤の組み合わせが奇形発現を増加させるとの報告があります。
また、多くの抗てんかん薬は血中の葉酸濃度を低下させ
母体の低葉酸濃度と奇形発現の関連が指摘されています。
妊娠前および妊娠初期に血中の葉酸値を測定し、低値であれば、葉酸の補充が行われます。
投与量、血中濃度、多剤併用の有無がポイント
http://ds-pharma.jp/medical/gakujutsu/tenkan/tenkan02/pregnancy/03.html
VPAに注目した研究結果をみると
本薬剤投与患者ではすべての奇形が600mg/day以上の用量で認められ
1,000mg/dayを超えると極めて奇形発現率が高くなる。
1日用量および血中濃度のそれぞれが上昇するほど奇形発現率は有意に増加することから
VPA投与においては可能な限り投与量と血中濃度を抑えるべきであろう。
VPAと他の薬剤を併用すると奇形発現が増加し
たとえばCBZ、PHTとの併用では、6割の患者に奇形が発現したとされる。
てんかん発作を抑制するためにはしばしば薬剤の併用を行うが
妊娠可能年齢の女性に対する薬剤の使い方は極めて重要であり、十分留意すべきである。
てんかん患者の妊娠におけるガイドライン
http://ds-pharma.jp/medical/gakujutsu/tenkan/tenkan02/pregnancy/13.html
VPAとCBZの併用は行わず、VPAがどうしても必要な症例においては
3〜4回の分割投与にするか、徐放剤を用いる。安全と考えられる用量として
PRMやCBZは400mg/day以下、VPAは1,000mg/day以下、PHTは200mg/day以下が指標となる。