バルプロ酸

笹嶋勝「クスリの鉄則」



バルプロ酸製剤(その2)
肝障害と意識障害を伴う高アンモニア血症に要注意
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/tessoku/201101/518335.html

バルプロ酸の特徴

バルプロ酸は、多くの種類のてんかんに効果があると言われています。
具体的には、特発性のてんかん、症候性の全般てんかん発作、部分てんかん
ミオクロニー発作、WEST症候群などです。
その他にも、てんかんに伴う精神症状、躁状態(気分安定)にも効果があると言われています。
適応外では、片頭痛の予防にも用いられます。電撃痛などにも効果がありますが
現在は第2世代のガバペンやリリカが用いられることが増えています。

投与量

てんかんの場合、5〜10mg/kg/日から開始し
改善を確認しながら、通常20〜30mg/kg/日で維持量を決めます。
CKDガイドラインでは、腎障害時や透析時でも、投与量の変更は必要ないとされています。

相互作用

カルバペネム系の抗菌剤との併用により
バルプロ酸血中濃度が極めて低下し、てんかん発作を誘発する可能性があります。
2009年にカルバペネム系の経口薬であるオラペネム小児用細粒
が発売されていますので、併用しないように十分気をつけなければなりません。

副作用

治療域の血中濃度でも、副作用が現れることがあります。
多いのは、傾眠やふらつきなどの精神神経症状および悪心・嘔吐などの消化器症状です。
食前に服用すると、消化器症状が強く現れるので、必ず何か食べてからの服用を勧めます。


投与初期(3〜5カ月)に見られることが多いので(徐放製剤の方が頻度は低い)
様子を見ながら処方を継続するのが一般的です。小児にこの傾向が多いと言われます。
また、脱毛や、体重増加が起きることもあります。


最も危険な副作用は、肝障害と意識障害を伴うアンモニア血症です。
アンモニア値の上昇は、バルプロ酸濃度と相関しないことが示されているので、注意が必要です。
投与開始6カ月間は定期的に肝機能検査をするように添付文書に勧告されているので
投与初期は、きちんと肝機能検査が行われているかどうかを確認します。

後発品への変更時の注意について

後発品に切り替えた場合、その前後で何らかの影響が出る可能性がありますので
切り替え後の変化をモニタする必要があるでしょう。
日本小児神経学会、日本てんかん学会からはこちらのような提言がなされています。