片頭痛の新攻略法  Vol.2

日経メディカル2013年2月号「特集 片頭痛の新攻略法」転載 Vol.2
トリプタンへの頼り過ぎは禁物、発作が多い患者には予防薬を
【PRACTICE】予防療法を活用しよう
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t194/201302/528979.html



◆保険で使える予防薬が豊富に
ここ数年、保険診療片頭痛予防に使える薬剤が一気に増えた。
11年6月、バルプロ酸片頭痛予防への使用が可能となった。
その後、同成分の後発品にも同じ適応が認められた。
12年8月には、β遮断薬のプロプラノロール(インデラル)も
片頭痛発作の発症抑制への使用が公知申請で認められた。
さらに、社会保険診療報酬支払基金
12年9月、三環系抗うつ薬のアミトリプチリン(トリプタノール)の
片頭痛と緊張型頭痛への適応外使用を「審査上認める」と発表した。


◆新規GLも予防療法を推奨
今春に改訂予定の、日本頭痛学会など4学会合同による
「慢性頭痛の診療ガイドライン」でも、予防療法の重要性が強調されている。
新たなガイドラインでは
片頭痛発作が月に2回以上あるいは6日以上ある患者では
予防療法の実施について検討してみることが勧められる」と
発作回数に応じて、予防療法を組み合わせることを推奨する。



予防療法の具体的な導入の目安として竹島氏は
「急性期治療薬の服薬日数が10日以上になる場合には
予防療法を組み合わせることを勧めたい」と語る。
これは薬物乱用頭痛の予防のためにも重要だ。
「予防療法を組み合わせることで、急性期治療薬の服薬日数を
月に10日以内とできれば、薬物乱用頭痛の危険性はなくなる」と言う。


予防療法の効果判定に関してガイドライン
「有害事象が少ない薬剤を低用量から開始し、十分な臨床効果が得られるまで
ゆっくり増量し、2〜3カ月程度の期間をかけて効果を判定する」と記す。
また竹島氏は、「発作を良好にコントロールできるようになれば、中止できる」
と予防療法の継続期間を説明する。


さらにガイドラインは、エビデンスの強さなどから予防薬を5つのグループに分ける。
有効のエビデンスが高いグループ1には
バルプロ酸やトピラマート、プロプラノロール、アミトリプチリンが含まれる。
ただしバルプロ酸は、血中濃度を定期的に測定し
至適血中濃度を維持するよう投与量を調節することが勧められており
非専門医には使いにくそうだ。
プロプラノロールは、薬物相互作用からリザトリプタンと併用禁忌とされる。
そのため、「リザトリプタンを使用している患者では、それ以外の
トリプタンに変更した上で、プロプラノロールを使用する必要がある」(山根氏)。
加えて、高度徐脈、低血圧症、気管支喘息などの患者への使用は禁忌だ。
アミトリプチリンは、うつ病に処方する用量よりも少量で片頭痛予防効果があるが
三環系抗うつ薬ということで、処方がためらわれるかもしれない。


このようなことから
エビデンスレベルは落ちるものの、副作用が少なく
使用経験も長いロメリジンが非専門医には使いやすいだろう」と、多くの専門医は話す。
ただし、ロメリジンは妊婦への使用は禁忌。
妊娠中の女性に対しては、バルプロ酸も禁忌とされ
プロプラノロールのみ慎重投与が可能となっている。


◆予防薬選択では共存症も考慮
何らかの共存症を有する患者に対しては
共存症にも効く薬剤を選択することもガイドラインは推奨する。
「例えば、高血圧を有する片頭痛患者にはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB
気分の落ち込みがある患者にはアミトリプチリンを選択する」と竹島氏。


ただし、同じクラスの薬剤でも、予防効果がある薬剤とそうでない薬剤がある。
竹島氏は「ARBのカンデサルタンやオルメサルタンには片頭痛の予防効果があるが
他のARBにはないというように、同じクラスでも差がある」と説明する。
片頭痛への効果の差がなぜ生じるかはまだ分からないが、エビデンスが示されている
薬剤をガイドラインなどで確認した上で、処方するのがよいだろう。


このように片頭痛診療で重要となる予防療法だが
その必要性を見極めるためには、発作や服薬の回数を把握しなければならない。



発作回数など患者の状態を理解する上で
頭痛ダイアリーの使用が役に立つと、多くの専門医が勧める。
頭痛ダイアリーとは、頭痛発作や生活への支障度などを患者が自分で記すもの。
日本頭痛学会のウェブサイトからダウンロードできる。