イミグラン点鼻液

片頭痛患者に処方された点鼻剤
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/ より一部改変
 
日経DI 2002年9月号から2003年8月号までに掲載された問題集

◆Question

長年、片頭痛に悩まされ、治療を続けている38歳の女性Kさん
今回から処方が変更されていたため確認すると、Kさんは次のように話しました。


片頭痛の発作が起きても、会議中だと薬がなかなか飲めないので困っていました。
それで今日、先生にそのことを話したら、
「では、鼻に差すスプレータイプのものが新しく出たので、試してみましょう」
と言われて、薬が変わることになりました。
確かに、スプレーだと便利だと思うのですが、
スプレーと錠剤とで、効果は変わらないのでしょうか。


処方せん
テラナス錠5 2錠
 1日2回 朝・夕食後 28日分
茱萸湯(2.5g/包)2包
 1日2回 朝・夕食前 28日分
イミグラン点鼻液20 6本
 頭痛発現時頓用(1回1本)
*前回までは、(3)の代わりにイミグラン錠50が、
頭痛発現時頓用(1回1錠)で処方されていた。


イミグラン(一般名:コハク酸スマトリプタン)では、
点鼻剤の方が錠剤よりも効果発現が早いとされている。
点鼻剤および錠剤の効果発現までの時間は それぞれおよそ何分か。

◆服薬指導

一番の大きな違いはお薬の効果が出るまでの時間です。
これまで服用されていたイミグラン錠は、
服用してからおよそ30分後に効果が出始めるのですが、
このイミグラン点鼻液では15分ほどで効果が現れます。


使用する時は、まず鼻をかんで通りをよくしてから、
鼻の穴の1cmぐらいのところにノズルの先端を入れてスプレーしてください。


点鼻剤であれば水も要りませんので、Kさんの場合ですと、
会議中などに使うこともできて便利なのではないかと思います。
ただ、注意していただきたい点として、
イミグラン点鼻液は鼻に差すタイプのお薬ですので、
鼻の穴に刺激を感じたり、炎症が現れることがあります。
また、薬をスプレーした後に、鼻を強く吸いますと、苦みを感じることがあります。

◆解説

片頭痛は、繰り返し起こる慢性頭痛の一種で、拍動性発作を特徴とする。頭痛の頻度は、月に数回から年に1回程度のものまで様々で、1回の発作の持続時間は数時間から、長い場合には数日間続く。悪心・嘔吐、光・音過敏などの随伴症状を伴うことが多く、頭痛に先立ち、閃輝暗点(視野の一部が暗くなり、その部分にキラキラした光が見える状態)などの前駆症状が現れるケースもある。

発現機序については、(1)血管の収縮と拡張によって頭痛が起こるとする「血管説」(2)大脳皮質神経細胞の過剰興奮によるものとする「神経説」(3)三叉神経血管を介する神経性の炎症を原因とする「三叉神経血管説」──の三つの説がある。もっとも、いずれの説でも疼痛の発現には、セロトニンが関与しているものとされており、実際、片頭痛発作直後に尿中セロトニン代謝物が増加することや、内頸静脈中の血小板セロトニン片頭痛発作中に急激に減少することが確認されている。

片頭痛の治療薬は、頭痛発作予防を目的とした「発作予防薬」と、発作時の症状緩和を目的とした「発作頓挫薬」に大別される。頻回に頭痛発作が起きる患者には、発作予防薬として、Kさんにも処方されているカルシウム拮抗剤の塩酸ロメリジン(商品名:テラナスほか)が使われることが多い。同剤は脳血管収縮抑制作用などを持ち、片頭痛に適応がある。このほか、呉茱萸湯などの漢方薬、また、片頭痛に対する適応はないが、三環系抗うつ剤、抗てんかん剤などもしばしば使用される。

一方、頭痛発作時には主としてセロトニン受容体作動剤が使用される。同剤は抗片頭痛作用を持つセロトニン5-HT1Bおよび5-HT1D受容体に選択的に作用する。また、三叉神経終末からのCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの放出を抑制し、血管周囲の炎症を抑える効果もあるとされる。現在、わが国ではコハク酸スマトリプタン(商品名:イミグラン)、ゾルミトリプタン(商品名:ゾーミッグ)、臭化水素酸エレトリプタン(商品名:レルパックス)の3種類が発売されている。

さて、Kさんに今回処方されたイミグラン点鼻液は、2003年6月に発売された国内初の点鼻剤の片頭痛治療薬である。噴霧器1個に1回量の20mgが充填された使いきりタイプとなっている。鼻粘膜から吸収されることから薬剤の血中移行が速く、錠剤の半分の約15分で効果が発現する。また、鼻腔内に投与するため、悪心・嘔吐時に使用できることもメリットとされる。

有効率については錠剤とほぼ同等である。発売前の臨床試験では、投与2時間後の有効率は、錠剤50mgで61%、点鼻剤20mgで63%と報告されている。発作が始まってから服用することや、2時間以上経過すれば追加投与が可能だが1日2回までしか使用できないことも錠剤と共通である。

ただ、点鼻剤では咽頭内に流入した薬剤による苦みを訴えた症例が報告されている。また、点鼻剤なので、鼻孔に対する刺激や炎症が現れることがある。これまで錠剤を服用していたKさんには、使い方の指導とともに、こうした注意点についても説明したい。