炭酸リチウムの臨床上の位置付けと相互作用
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/tessoku/201202/523601.html
◆双極性障害の躁状態エピソード
薬理作用はいまだ不明ですが
躁病治療においては炭酸リチウム(リーマス)が第1選択薬に位置付けられています。
しかし双極性障害においては、躁病エピソードが急速に悪化するため
即効性のないリチウムの限界が指摘されています。
双極性障害の躁状態エピソードには、最近では、オランザピン、アリピプラゾールを
はじめとする統合失調症治療薬を併用することも多くなっています。
リチウム単独だと、オランザピンの効果に追い付くまでに10日間を要します。
リチウムが使用できない場合や、効果がない場合は
リチウムの代わりにバルプロ酸を使うのが「次に推奨される治療」とされています。
◆相互作用
チアジド系利尿薬との併用には特に注意が必要です。
チアジド系利尿薬は、ナトリウムを排泄する作用があるため
リチウムの再吸収が促進されます。
ARBとチアジド系利尿薬の合剤も多く発売されているので、十分に注意してください。
ACE阻害薬やNSAIDsも、同様にリチウム血中濃度を上昇させ
中毒を発症するリスクがあります。特に高用量で使用している患者に追加でこれらが併用されたら
炭酸リチウムを処方した医師に、その旨を伝える必要があると考えます。
薬剤ではありませんが、食塩摂取制限でも
血中のナトリウム減によって相対的にリチウム値が上昇します。
添付文書上も、食塩制限中の患者へのリチウム投与は「禁忌」となっています。
炭酸リチウムの副作用と中毒症状
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/tessoku/201202/523719.html
◆血中濃度推移の特徴とTDM
炭酸リチウムは定常状態に達するには5〜7日間を要します。
◆副作用
炭酸リチウムでは、服薬開始からの時期によって、発現する副作用が異なります。
- 投与開始時から1週間以内に起きやすい副作用
消化器症状、細かい振戦、多飲多尿、口渇など。
一過性のことが多く、消化器症状は食後服用を徹底させることが有効とされています。
- 投与開始1〜6週間以内に起きやすい副作用
傾眠、筋力低下、易疲労感、振戦。
振戦は、最も頻度が高く、高齢者になればなるほど多いとのことです。
振戦には抗パーキンソン病薬は無効であり
プロプラノロールやカルテオロールを選択すべき旨の記載があります。
- 長期投与中に起きやすい副作用
上記の他に、体重増加、甲状腺機能異常などがあり
服用中止や減量で改善・消失する旨の記載があります。
甲状腺機能異常もよく知られています。
急激に中止すると、躁状態の再発リスクが高くなることが知られています。
中止する際は、2週間〜1カ月かけて徐々に減量していきます。
◆中毒症状
初期症状として、食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢等の消化器症状が出ます。
◆腎障害のある患者への投与
程度に限らず、禁忌とされていますので、腎障害の有無の確認は必須です。
◆妊婦・授乳婦への投与
妊婦への投与は禁忌です。