笹嶋勝「クスリの鉄則」
抗甲状腺薬の特徴と注意点
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/tessoku/201112/522811.html
12月1日に、PMDA(医薬品医療機器総合機構)の
「関係学会等及び製薬企業からの医薬品の適正使用に関するお知らせ」に
チアマゾールの催奇形性に関する情報が掲載されました。
◆中外製薬
チアマゾールによる先天異常について(PDFファイル)
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201112_3.pdf
また同日、チアマゾールによる無顆粒球症に関しての注意喚起もなされました。
◆PMDAからの医薬品適正使用のお願い
チアマゾールによる無顆粒球症の防止・早期発見について
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/tekisei_pmda_05.pdf
◆中外製薬
メルカゾール安全性情報 無顆粒球症について
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201112_2.pdf
■薬剤の選択
抗甲状腺薬は
チアマゾール(MMI、商品名メルカゾール)と
プロピルチオウラシル(PTU、商品名チウラジール、プロパジール)
の2種類しかありません。
薬理作用は、MMIもPTUも同じです。
国内の試験では、血中のFT4(遊離チロキシン濃度:甲状腺機能の指標)が
7ng/dL以上の場合、メルカゾール 30mg/日投与が、プロパジール 300mg/日投与よりも
効果があったと報告されています。
また、プロパジールの方が
重篤な副作用の発現頻度が高いと言われていることもあり
第1選択はメルカゾールとなっています。
血中FT4が7ng/dL以上であればメルカゾール 30mg/日
5ng/dL以下であればメルカゾール 15mg/日を投与するのが一般的です。
しかし妊娠初期の場合は、プロパジールが第1選択です。
また、メルカゾールによる副作用が現れた場合も、プロパジールが使用されます。
(いずれも別項参照)。
■妊婦・授乳婦への投与
胎盤移行性はMMIもPTUも同等ですが、冒頭で触れたように、最近
メルカゾールでは催奇形性が示されました。
プロパジールでは、その傾向は認められていませんので
妊娠初期(妊娠8週まで)の第1選択薬はプロパジールとなります。
授乳婦の服用に関しては
メルカゾールなら10mg/日以下、プロパジールなら300mg/日以下なら
完全に母乳で育児をしていても乳児の甲状腺には影響がないと言われています。
■副作用
メルカゾールでの副作用発症には、投与量が関連すると言われますが
プロパジールの場合は投与量との関連はありません。
副作用をモニタするために、メルカゾールでは血液検査が義務付けられていますから
薬剤師は検査が実施されているかどうかを確認しなければいけません。
以下の副作用は、服用開始3カ月以内に起きることが多いですが
最後に挙げた「MPO-ANCA関連血管炎症候群」については
服用後1年以上経過して起きると言われています。
【軽度なもの】
頻度の高いものとして、蕁麻疹や軽度肝障害があります。
蕁麻疹は、抗ヒスタミン薬などで効果なければ、他剤に変えます。
【重度なもの】
●顆粒球減少
メルカゾールで特に問題となります。詳細は、冒頭の資料で確認してください。
発熱、のどの痛みなどの感染症症状が初期症状です。早期に医師の診断を必要とします。
●重度の肝障害
プロパジールで起きることが多いとされます。
●MPO-ANCA関連血管炎症候群
メルカゾールの添付文書にも重大な副作用として追記されましたが
プロパジールによって起こることが多いです。
急速進行性糸球体腎炎から腎不全に陥ることもありますので
特に初期症状の血尿に注意が必要です。