高コレステロール血症治療、第2幕
LDL-Cを7割下げるPCSK9阻害薬が発売
家族性患者には福音も薬剤費は高額に
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201604/546516.html
「高コレステロール血症の治療は、PCSK9阻害薬の登場で第2幕に入った。
スタチンが主役となった第1幕とは異なる新たな時代の幕開けといえるだろう」――。
帝京大学臨床研究センター長の寺本民生氏は、PCSK9阻害薬のインパクトをこう表現する。
PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)とは、
「前駆蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型」などと訳される蛋白分解酵素の1つ。
PCSKは、様々な生理活性物質の前駆体から活性体を切り出す機能を持つ。
その中でPCSK9は血中に存在し、細胞膜上にあるLDL受容体と結合して、
LDLとともに細胞に取り込まれた同受容体の分解を促進する。
PCSK9が過剰に存在すると、LDL受容体数の減少によって
LDL取り込みが抑制されるため、血中LDL-Cが上昇する。
もともとPCSK9はFHの3番目の原因遺伝子として、2003年に見いだされた。
その後の研究から、PCSK9遺伝子に機能損失型変異があると
LDL-Cは低値で冠動脈疾患の発生率も低いことが分かった。
そこで、高コレステロール血症に対する創薬のターゲットとして一躍注目されるに至った。
実際の介入方法として、
(1)蛋白分解酵素としての活性を阻害する、
(2)細胞内でのPCSK9の産生を抑制する、
(3)抗体を使って血中から除去する――などが検討されたが、
結局は(3)の抗体医薬としての開発が、最も早く実を結んだ。
LDL-Cは投与前値から7割低下
我が国でPCSK9阻害薬として最初に発売されるのが、
アステラス・アムジェン・バイオファーマのエボロクマブ(商品名レパーサ)。
既に今年1月に承認を取得し、4月末にも薬価が決定する見込み。
次いでサノフィのアリロクマブが、今年夏には承認されそうだ。
どちらも遺伝子組み換えヒト型モノクローナル抗体で、皮下注射で投与する。
エボロクマブの適応症は、FHまたは高コレステロール血症で、
心血管イベントの発現リスクが高くスタチンで効果不十分な場合に限るとなっている。
基本的な用法・用量は140mgを2週間に1回皮下投与、または420mgを4週間に1回皮下投与だ。
現状では、PCSK9阻害薬はスタチンとの併用が求められる。
これは、高コレステロール血症の治療ではスタチンが標準薬であり
治験も併用で行われたためだが、これら2剤の作用機序からみても、
併用は理にかなった使い方となる。
スタチンによって細胞内のコレステロール生合成が抑制されると、
SREBPという転写因子が活性化されてLDL受容体の合成が亢進する。
その結果、LDLの取り込み増加を介して血中LDL-Cが低下するのだが、
SREBPはPCSK9の合成も促進してしまう。
これが、スタチンを増量しても効果はあまり増強されない理由の1つとされる。
スタチンで増加したPCSK9を抗体で取り去ることで、
相加的なLDL-C低下効果が期待できるというわけだ