利尿薬

笹嶋勝「クスリの鉄則」
利尿薬の特徴と使い分け

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/tessoku/201207/526090.html


利尿薬は、水やナトリウムを排泄するだけでなく、RA系を賦活させます。
ループ系利尿薬はレニン分泌を直接亢進させます。
血管内で作用するのでなく、尿細管でナトリウム輸送細胞と結合して作用します。
従って利尿薬の作用において、血中濃度は通常の薬と同じ意味を示しません。
ほとんどの薬が腎排泄ですが
トラセミド、スピロノラクトンは肝代謝を受けます。
スピロノラクトンは、血管側から作用する薬剤です。


フロセミドは蛋白結合率が高く、蛋白尿があると管腔内のアルブミンと結合し
阻害するはずの輸送体と結合する成分が減少します。なので、利尿効果が減弱します。


トラセミド(ルプラック)は
ループ系利尿薬としての作用を持つのに加え、抗アルドステロン作用を持ちます。
作用発現はフロセミドより遅く、作用時間が長くマイルドという特徴があります。
また、心不全があっても良好に吸収されます。

疾患による使い分け

◆浮腫への使用
ループ系利尿薬は最強の利尿作用を示すので
浮腫に対して用いる場合は、第一選択となります。
ループ系利尿薬は用量依存性を持ちます。


◆降圧目的での使用
ループ系利尿薬は、血圧を下げる効果はあまり高くないため
降圧目的ではチアジド系利尿薬を用います。
投与量を多くしても降圧作用はあまり変化がないことから
最近では少量で用いることが増えています。


心不全への使用
ループ系利尿薬のフロセミドを用いることが多いですが
心不全時には腸管も浮腫を起こし、薬剤の吸収が悪くなります。
作用に個人差があることも覚えておくべきです。
また、作用時間が短いため、リバウンドも起こりやすくなります。
安易にフロセミドを用いるべきでないという意見もあります。
RALES試験でスピロノラクトンにもうっ血性心不全に対する効果があることが判明し
こちらも用いられるようになってきています。


◆肝硬変への使用
カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン)は
高アルドステロン血症の患者に最も効果があるので
原発性アルドステロン症や肝硬変での第一選択薬となります。
もっとも肝硬変時には、フロセミドと併用することも多く行われます。


◆腎機能低下時の投与
ループ系利尿薬は腎機能低下例でも用いることができますが
チアジド系利尿薬は、腎機能低下例に投与しても効果がないばかりか
さらにループ系利尿薬と異なり腎血流量低下作用があるため
腎機能の悪化を招くので投与しません。
ただし、ループ系利尿薬と併用した場合は、「相乗的に」利尿効果が増大するため
ループ系利尿薬でも不十分な難治性浮腫の患者に併用されることがあります。
カリウム保持性利尿薬は、急性腎不全の患者に投与すると
カリウム血症を誘発または増悪させるため、投与禁忌となっています。


◆その他
腎性尿崩症や副甲状腺機能低下症にチアジド系利尿薬を用いることがありますし
スピロノラクトンはにきびの治療にも適応外で用いられることがあります。
これはわが国のみならず、海外でも行われています。
フロセミドは乱用などにより、Pseudo-Bartter症候群を引き起こすことがありますが
これにスピロノラクトンを用いることがあります。

副作用

チアジド系利尿薬、ループ系利尿薬に共通するのは
脱水、低カリウム血症や高尿酸血症です。
カリウムの排泄は、ループ系利尿薬よりもチアジド系利尿薬の方が強いです。
カリウム血症はよく知られていますが、致死的不整脈を誘発することもありますので
十分な注意が必要です。長期使用により、耐糖能異常を起こすこともあります。


チアジド系利尿薬は高カルシウム血症を起こしますが
ループ系利尿薬は高カルシウム血症を改善するという違いがあります。


チアジド系利尿薬は、リチウム製剤との併用により
リチウム中毒を起こす可能性があるので、注意が必要です。