心房細動 新ガイドライン

European Society of Cardiology 心房細動診療 新ガイドライン

明確な薬物選択の基準が示される 心臓血管研究所 山下武志先生
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1009/1009018.html

レートコントロール

lenient(緩めの)コントロールの推奨が加わる
オランダで行われたRACEⅡ試験 (N Engl J Med 2010) の結果が
レートコントロールの指針に強く影響している。
症状がない限り、lenientコントロール(心拍数110拍/分未満)が推奨され
これまでのような厳格な心拍数管理は、症状のある場合に薦められるという記載に変化した。




リズムコントロール

不整脈薬の選択は、より単純化の方向へ


1. 抗不整脈薬治療は症状を軽減する目的で行うものである
2. 抗不整脈薬で洞調律を維持する効果は”modest”である
3. 抗不整脈薬治療は心房細動の再発をなくすものではなく
  減らすことで臨床的には成功と考えるべきである
4. 1つの抗不整脈薬に効果がない場合
  他の抗不整脈薬が効果を示す場合があるかもしれない
5. 抗不整脈薬による新たな不整脈の出現、心外性副作用はしばしば生じる
6. 抗不整脈薬の選択は、効果よりもまず安全性を指針とすべきである


以上の記載は
不整脈治療における抗不整脈薬の位置付けを
これまで以上に明確にしたと考えられる。
その結果、抗不整脈薬の選択は簡潔なものとなった。
上記の原理原則に基づけば、細かな選択基準が無用なものとなるためだろう。


基礎心疾患のない場合は、Ⅰ群薬、もしくはdronedarone/ソタロールを用い
無効な場合にアミオダロンが選択される。
基礎心疾患のある場合には、重症心不全を除いて第一選択薬はdronedarone
無効な場合にアミオダロン、重症心不全ではアミオダロンが第一選択薬となっている。





大ざっぱにとらえると
第一選択薬dronedarone、第二選択薬アミオダロンと
暗記するだけですむ程度にまで簡略化されたと言えるかもしれない。


一方で、日本ではまだdronedaroneの治験が行われておらず
当分の間このガイドラインを用いることはできないだろう。
ただし、近々アミオダロンが心不全合併心房細動に対して
保険適用がなされる予定とされており、このガイドラインから
dronedaroneそして基礎心疾患のない場合におけるアミオダロンを除けば
そのまま日本の医療に適応可能ではないかと思われる。


いずれにせよ、日本では抗不整脈薬の種類が多すぎること
同時にこれまで安全性が軽視されて用いられてきた傾向があることは否めない。
このESCガイドラインに見られる明確なコンセプトと抗不整脈薬選択の単純化
今後日本にも取り入れていくべき課題だろう。