桂枝茯苓丸

桂枝茯苓丸

https://www.kampo-s.jp/web_magazine/back_number/342/pharmacist-342.htm
森田真樹子先生
京都大学医学部附属病院薬剤部・妊婦授乳婦薬物療法認定薬剤師

桂枝茯苓丸の服薬指導例

50歳代、閉経後の女性。
婦人科病棟にがん化学療法を目的に短期入院。
更年期症状を医師に訴えて桂枝茯苓丸が開始となった

薬剤師「今回処方された桂枝茯苓丸は、冷えのぼせを改善する漢方薬です。
ちなみに、シナモンはお好きですか?」
患者「嫌いです。わたし、八つ橋も嫌いで食べられないの」
薬剤師「それでは、この漢方薬の味はあまり好きじゃないかもしれませんね。
この漢方薬にはケイヒという生薬が入っているのですが、
ケイヒとはシナモンのことです。
シナモンの香りがして、味は少し渋く感じるかもしれません」
患者「そうですか。でも冷えのぼせがつらいので、飲んでみます。
私はのぼせもあるのに、この漢方薬は私に合ってるのかしら?」
薬剤師「冷えのぼせは、お風呂のお湯がかき混ぜられていない状態です。
お風呂のお湯がしっかりかき混ぜられていれば適温なのですが、
放っておくと上の方が熱く、下の方が冷たくなります。
桂枝茯苓丸は、お風呂をかき混ぜるように、
全体の血行をよくする漢方薬です。
血行がよくなることによって、冷えものぼせも改善されるはずです。
一般的に、漢方薬は効き目が出るまで2週間くらいかかります」

桂枝茯苓丸の構成生薬

ケイヒは気を身体に巡らせ、冷えやのぼせを改善し、
ブクリョウは水分の代謝異常を改善します。
トウニンとボタンピは血の流れをよくし、
シャクヤクは痛みを和らげます。


桂枝茯苓丸は、
加味逍遙散、当帰芍薬散と合わせて三大婦人漢方薬といわれています。

桂枝茯苓丸が主に用いられるのは、
のぼせ気味で体格ががっちりとしたタイプの成人女性の
瘀血(微小循環障害)に伴う諸症状です。
主な症状としては、
子宮内膜炎、月経不順、月経困難、帯下、
更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こり等)、
冷え症、腹膜炎、打撲症、痔疾患などで、
そして男性の睾丸炎にも使われます。

冷え症に使用する漢方薬には、当帰芍薬散もありますが、
当帰芍薬散は比較的体力が低下して体の熱を作り出せない
熱源不足タイプに用いられます。

桂枝茯苓丸は血の巡りが滞り、
熱が行き届かない循環不足タイプに使用します。
のぼせの症状に桂枝茯苓丸が使用されるのは、
更年期の女性だけではありません。
前立腺がんの内分泌治療として
GnRHアゴニストを投与している男性に対して、
また、子宮内膜症子宮筋腫に対して
GnRHアゴニスト治療を受けている女性に対して使用されます。
GnRHアゴニストの副作用症状の1つである
のぼせ等のホットフラッシュを改善する目的で、
桂枝茯苓丸が用いられることもあるのです。
そのほかに痔、精索静脈瘤のある男性不妊などにも用いられます。
これらの疾患に共通するのは、
血流がうっ滞して発症しやすくなることで、
桂枝茯苓丸によって血行が促進し、
うっ血が取り除かれることによって、
これらの疾患が改善されます。


薬剤師から患者さんへの説明

桂枝茯苓丸にはケイヒが含まれており、
シナモンが嫌いな方は飲みにくいと感じるかもしれません。
シナモンは、京菓子で有名な八つ橋にも使われているように、
昔は甘味料として使われていました。
不思議なことにシナモンは少量だと甘く感じますが、
大量だと渋味を感じます。
桂枝茯苓丸にも少し渋味があります。
患者さんの中には漢方薬の味や香りを嫌う人がいますので、
予め説明しておきます。