低用量ピルと血栓症

低用量ピルと血栓症…兆候があれば即受診
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避妊薬である低用量ピルの販売が国内で始まり、今月2日で15年を迎えた。
普及が進む一方、服用中に血栓症で死亡するケースが問題になっている。


低用量ピルは、2種類の女性ホルモン(エストロゲン、プロゲスチン)を含む錠剤だ。
卵巣の働きが抑えられ、排卵が止まる。
21日間服用した後、7日間、効き目のない偽薬を服用するか休薬し、
再び服用するなどの飲み方がある。


月経困難症や子宮内膜症、貧血の軽減の効果もある。
2008年には、月経困難症治療薬として保険がきく低用量ピル(LEP製剤)も登場した。


しかし、厚生労働省は今年1月、
LEP製剤「ヤーズ」の製造販売会社に対し、
血栓症に関して添付文書での注意喚起などの対策を要請した。
服用中の女性が1年間で3人、血栓症で亡くなったためだ。


血栓症は、すべての低用量ピルで起こりうる副作用。
エストロゲンが肝臓で代謝されると、体内で血液を固める働きが強まる。
日本産科婦人科学会の緊急調査では、過去5年間に国内で、
低用量ピルを服用中の13人が、血栓が肺や脳の血管に詰まり死亡していた。


13人中5人は医療機関を受診せず、産婦人科を受診したのは2人だけだった。
血栓症は早期の診断と治療が有効だが、愛知医大産婦人科教授の若槻明彦さんは
「副作用と気付かず受診が遅れて重症化したケースが、少なからずあるとうかがえた」
と話す。


学会は今年6月、重症化を防ぐ対策をまとめた。
問診で血栓ができやすい人には処方しないことや、処方の際に血栓症の特徴を説明し、
症状があれば、処方した医療機関や救急病院の受診を勧めるよう求めた。


血栓症は服用を始めて3か月以内に起こりやすく、
兆候として、ふくらはぎの痛み、激しい腹痛や頭痛、
胸痛、見えにくさや舌のもつれなどがある。


日本家族計画協会理事長の北村邦夫さんの推計では、国内での服用者は132万人。
米国の調査では、足などの静脈に血栓ができる静脈血栓塞栓症の頻度は、
一般女性は年間1万人あたり1〜5人。
低用量ピルを服用すると3〜9人に高まるが、
妊娠中(5〜20人)や産後12週間(40〜65人)より頻度は低い。


北村さんは
「骨折治療や抗がん剤治療などで起こる血栓症の頻度と比べても、極めてまれだ」
と指摘する。
注意喚起の報道に接して不安を訴える服用者もいたが、
多くはリスクの程度や対応を理解し、確実な避妊や、
月経痛のない快適な生活といった利点を重視し、服用を続けたという。


「やめ時」も知っておきたい。
服用中は、生理に似た出血があり、更年期の症状も出ないため、閉経を自覚できない。
だが閉経すれば、排卵を抑える強さのエストロゲンは不要だ。


英国の研究では、低用量ピル服用中の血栓症は、39歳以降で明らかに高まった。
国内の血栓症による死亡者13人では、40歳代が4人、50歳代が2人いた。


若槻さんは
「45歳を過ぎたら一度、血液検査などでホルモンの状態を調べ、閉経と判断されたら、
血栓症のおそれが低いホルモン補充療法用の製剤に切り替えるなどの対応が望ましい」
と話している。
(2014年9月11日 読売新聞)