女性の健康Q&A 「ピル」<3>より
種部恭子先生
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/beauty/kokokara/20090507ok02.htm?from=nwla
回答
子宮内膜症は
子宮の外側や卵巣など本来の場所ではないところに「子宮内膜」の組織ができる病気で
月経のたびに子宮内膜症の病巣でも出血が起こるため
月経痛、性交痛、排便痛などが起こります。卵巣に病巣ができると
卵巣で出血した古い血液が貯まり嚢胞(チョコレート嚢胞)を形成します。
ピルに含まれる黄体ホルモンによって子宮内膜が薄くなるのと同じ仕組みで
ピルを服用すると、子宮内膜症の病巣も勢いを失った状態になるため
病気の進展が抑制され、月経痛も緩和されます。
子宮内膜症は、月経がある間は進行し、手術などの治療を行っても
再発を繰り返す疾患ですので、閉経まで気を抜くことは出来ません。
ピル以外のホルモン療法を長期間続けることは副作用や費用などの面から困難ですが
ピルであれば安価で副作用が少ないので、手術適応とならない程度の子宮内膜症であれば
閉経までピルで治療を継続することが可能です。
ピルのマイナートラブルと重篤な副作用については
心筋梗塞などの心血管系障害は
(1)加齢
(2)喫煙
(3)妊娠
が最大のリスクで、ピルの服用によるリスクはこれらよりはるかに少ないものです。
血栓症リスクも同様で、血栓症の死亡リスクは、ピルより妊娠・出産の方が60倍高く
喫煙はピルの167倍の死亡リスクであることがわかっています。
また、乳癌リスクの上昇も副作用としてあげられていますが
ピル未使用者と比較した乳がん発生リスクは1.0倍〜1.24倍というように
報告にばらつきがあります
現在、日本人女性の乳癌発生率は23人に1人と、ピルの服用率がまだ2%弱
であるのにもかかわらず最近急激に増えており、ホルモン使用の有無よりも
ライフスタイルの変化の影響が大きいと考えられます。
便秘については
ピルに含まれる黄体ホルモンにより腸管の運動が低下する場合があることは予測されますが
全員に便秘が起こるものではなく、ピルの種類を変更することで改善できることもあります。
また、もともと習慣性便秘がある女性が多いのですが、便秘薬の併用は可能です。