不眠 ×漢方

不眠  -漢方のアプローチと数処方の使い分け-
森永明倫先生 東京女子医科大学附属東洋医学研究所  .
https://www.kampo-s.jp/web_magazine/back_number/366/index2-366.htm

f:id:sna59717:20200827182828j:plain

柴胡加竜骨牡蛎湯

柴胡剤の1つであり、構成生薬のうち、
柴胡は肝気の高ぶりによるイライラを抑え、
竜骨、牡蛎は驚きを抑えるような抗不安作用をもつ。
イライラや不安が強い、少しの音にも驚きやすい、動悸がする
悪夢をよく見るなどの訴えがあり、便秘傾向であり、虚証でなければ用いる。

副作用としては黄芩(オウゴン)による肝機能障害、間質性肺炎に注意が必要である。
製薬会社によって
大黄を含むもの(オースギ)と
大黄を含まないもの(ツムラ)があり、
便秘のない患者には大黄を含まない製剤を選択するが、
含まなくても下痢することがあるので、あらかじめ説明しておくとよい。

抑肝散(抑肝散加陳皮半夏)

興奮しやすい、怒りっぽい、イライラして入眠できない、悪夢を見る場合に用いる。
入眠1~2時間前に内服することで興奮が収まり、入眠しやすくなる。

半夏厚朴湯

気うつに用いる代表的方剤の1つである。
気分の落ち込みを伴う不眠に用いる。
身体症状として、咽喉のつかえたような違和感、不安感
胸部閉塞感、動悸、めまい、咳嗽などを目標に使用する。
また柴胡剤など他の方剤と併用することも多い。 .

酸棗仁湯(さんそうにんとう)

高齢者であればまず試してみてもよい方剤である。
心身ともに疲れ切っているのに、頭がさえて眠れない場合に用いる。
不安・焦燥感があり、夢をよく見る、中途覚醒するなどの症状を伴うことが多い。 .

桃核承気湯

頭に血が上ってイライラがとても強く眠れず、中間証から実証の場合で用いる。
身体症状として、頭痛、めまい、のぼせ、肩こり、便秘などがあり、
女性では加えて月経不順、月経困難症、月経前症候群を目標に使用するとよい。

加味逍遙散

イライラや抑うつ気分などを伴う不眠に用いる。
身体症状として、頭痛、のぼせ、めまい、肩こり、
胸部不快感、動悸、その他いわゆる不定愁訴など多彩な症状を伴う。
女性では月経不順、月経困難症、月経前症候群で用いることが多い。
理気補血、駆瘀血作用のある生薬が含まれる。
腹診では腹力中等度以下、胸脇苦満、臍傍圧痛を認める。
山梔子を含むため長期投与の場合は副作用として腸間膜静脈硬化症に注意が必要である。
症状に応じて減量や他剤への切り替えを検討する。 .

柴胡桂枝乾姜湯

神経過敏で、不安を伴う不眠で用いる。
身体症状としては首から上の発汗、のぼせ、口乾、易疲労、寝汗、動悸、足の冷えを伴う。

桂枝加竜骨牡蛎

柴胡加竜骨牡蛎湯と同様に竜骨、牡蛎を含み、抗不安作用をもつ。
この方剤も不安があり、少しの音にも驚きやすい、
動悸がする、悪夢をよく見るなどの訴えがある場合に用いる。
寝汗、脱毛しやすいなどの症状を伴うこともある。

黄連解毒湯

体に冷えがなく、熱がこもる、顔面紅潮やのぼせがあり、
イライラして入眠できない場合に用いる。
実証で適応となることが多く、虚証では冷えが強くなったり、
消化器症状(下痢など)を起こしたりするので、注意が必要だが、
少量の頓用であれば副作用なく使えることもある。
山梔子を含むため長期連用は避ける。 .

帰脾湯・加味帰脾湯

元々虚弱な体質の人が思い悩んで食欲が低下し、
驚きやすい、動悸、寝汗、健忘などを伴う不眠には帰脾湯を用いる。
それに加えてイライラなどの精神症状や胸部不快感があれば、加味帰脾湯を用いる。
加味帰脾湯は山梔子を含むため長期連用はできるだけ避けて帰脾湯に切り替えるなど工夫する。 .