笹嶋勝の「クスリの鉄則」
三環系・四環系抗うつ薬三環系・四環系の薬理作用と治療上の位置づけ
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/tessoku/201203/524098.html
各薬剤の特徴
【三環系抗うつ薬(第1世代)】
- イミプラミン(トフラニール)
抑制や不安を緩解する効果、遺尿に対する効果が認められる。
抑うつ気分、意欲低下の改善に有効。
イミプラミンよりも効果発現が早い。
感情調整作用や不安鎮静作用に優れており
絶望感、苦悶、希死念慮などを伴う症例に有効。
- アミトリプチリン(トリプタニール)
抗うつ作用と、トランキライザー作用を併せ持つ。
身体症状、自律神経症状が顕著なタイプに効果がある。
不眠、不安、焦燥を緩解する。仮面抑うつにも効果がある。
【三環系抗うつ薬(第2世代)】
投与開始後4〜7日以内に多くの症例で効果が認められる速効性の三環系抗うつ薬。
抑うつ、抑制に優れた効果を示し、不安、緊張にも有効。
抗コリン作用は三環系抗うつ薬よりも軽度であると評価されている。
【四環系抗うつ薬】
- マプロチリン(ルジオミール)
抗コリン作用は極めて弱い。
三環系抗うつ薬とほぼ同等の作用を示し、特に不安、焦燥、不眠の改善効果がある。
抗うつ作用は比較的速く現れる。分割投与のほか、就寝前の1日1回投与も可能であり
服薬コンプライアンスの向上、夜間の睡眠障害改善に有用。
分割投与のほか、1日1回投与が可能で、眠気の副作用を軽減できる。
【二環系抗うつ薬】
徐波睡眠を増加させる。
薬理作用
- 三環系抗うつ薬
セロトニン(5-HT)トランスポ−ターと
ノルアドレナリン(NA)トランスポーターの両方に作用し
脳内のセロトニンおよびノルアドレナリンを増加させることで抗うつ作用を示します。
5-HT/NA比率で見ると、イミプラミン(トフラニール)が小さく
さらに小さいのがマプロチリン(ルジオミール)です。
逆に、クロミプラミン(アナフラニール)は5-HT/NA比率が大きい
すなわちセロトニン再取り込み阻害作用が強い抗うつ薬で
その作用はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に類似しています。
三環系抗うつ薬と類似の薬理作用を持ちますが
ルジオミールには、セロトニンの再取り込み阻害作用がありません。
側鎖が長い方が抗うつ作用を強いとされ、ルジオミールには長い側鎖があります。
治療上の位置付け
SSRIやSNRIが効かず、精神症状を伴わない重症うつ病に
三環系抗うつ薬が効くことがしばしばあります。
第1世代の抗うつ薬は、作用発現に1〜2週間を要します。
二環系のトラゾドン(デジレル)は、心毒性が少なく、高齢者に使いやすい薬剤です。
第1選択はSSRIで、ほかに適応があるのはベンゾジアゼピン系薬だけですが
三環系抗うつ薬のアナフラニールが用いられることがあります。
治療効果は、フルボキサミン(ルボックス)と同等と言われます。
抗うつ作用が2〜4週間で現れるのに対し
強迫性障害では効果発現に8週間以上かかります。
第1選択はSSRIですが、三環系抗うつ薬のイミプラミンにも効果あると言われます。
ただし適応はありませんし、効果発現に10日〜2週間かかります。
服用初期にいらいら感があるので
この時期にはベンゾジアゼピン系薬を併用するのが一般的です。
- 鎮痛作用
いずれの薬剤でも適応外ですが
うつに対する用量よりも少ない用量で鎮痛効果を示します。
作用発現までにかかる時間も1週間程度と
抗うつ作用を期待して使用する場合よりも早い傾向があります。
特に、神経障害に伴う癌性疼痛、帯状疱疹後神経痛
糖尿病性の神経障害に伴う疼痛など、オピオイドが効きにくい痛みに効果を発揮します。