リウマトレックス

メトトレキサートの副作用に悩むリウマチ患者
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/ より一部改変


◆Question

関節リウマチの治療を続けている40歳の女性
前回から、リウマトレックスを飲み始めましたが
2週間飲んでも効果がありませんし、胃の調子が良くなくて
食欲がなくなってしまいました。先生にも相談したのですが
「もう1種類お薬を増やすので、様子を見てください」と言われました。
この薬は胃の薬なのでしょうか。効果が出ていないのに
胃の薬を飲んでまで、薬を飲み続ける意味はあるのでしょうか。


処方せん
リウマトレックスカプセル2mg 2カプセル 分2
  日曜日の朝夕食後 4日分(実質投与日数)
フォリアミン錠(5mg) 1錠 分1
  日曜日の朝食後 4日分(実質投与日数)

◆服薬指導

リウマトレックスというお薬は、効果が現れるまでに早くても3〜4週間かかります。
もう少し続けて飲んで、どの程度の効果があるのかを確かめてみることをお勧めします。
フォリアミンは胃薬ではなく、ビタミンBの一種である葉酸の錠剤です。
リウマトレックスを飲むと、体の中に葉酸が足りなくなってしまい
その影響で胃の調子が悪くなることがあります。
このような症状を改善するために、葉酸をお飲みいただくのです。
ビタミンの一種ですので、体への悪影響はありません。
1週間に1錠、日曜日の朝食後にお飲みいただくだけですが
これだけの量でも胃の調子を回復させられることがわかっています。

◆解説

 関節リウマチの治療では、関節痛をNSAIDs等により軽減させるとともに、免疫異常を是正し関節破壊の進行を防ぐために、抗リウマチ剤(DMARDs)が使用される。

 Sさんはこれまで、NSAIDsのロキソニン(一般名:ロキソプロフェンナトリウム)とDMARDsのモーバー(一般名:アクタリット)を服用していたが、十分な効果が得られなかったため、リウマトレックス(一般名:メトトレキサート)が追加されている。

 メトトレキサートの作用機序は不明な部分も多いが、体内での葉酸の活性化を阻害することにより、免疫抑制作用や抗炎症作用を示すものと考えられている。同剤は、連日投与すると骨髄抑制、肝機能障害、間質性肺炎など、重篤な副作用が高頻度で生じるため、パルス投与(1週間単位で12時間置きに3回まで)が行われる。

 メトトレキサートは、効果発現までに少なくとも3〜4週間を要するものの、これは他の抗リウマチ剤が2カ月程度かかるのに比べると短い。また、一般に抗リウマチ剤は投与数年で効果が減弱し投与中止になるが、メトトレキサートは効果減弱のために中止されることは少なく、効果減弱がみられた場合も増量により効果が再現する。

 メトトレキサートの投与中止は副作用による場合が大半で、具体的には、胃腸障害、口内炎、肝機能低下が主な原因となる。ただし、これらの副作用は、Sさんにも処方された葉酸(商品名:フォリアミン)の併用により軽減されることがある。この作用機序は不明な部分も多いが、胃腸障害などの副作用が、メトトレキサートによる葉酸の作用不足に起因しており、これが葉酸の補充で解消されるものと考えられている。

 もっとも、メトトレキサートの作用機序が葉酸活性化阻害にあることから、葉酸の投与量が多ければ治療効果が低下する。効果を維持しつつ副作用を軽減するための最適な葉酸の投与方法は確立されていないが、わが国では、副作用発現後に、1週間に5mg程度の葉酸を投与するのが一般的である。

 なお、メトトレキサートの副作用軽減のために、葉酸の活性代謝物であるロイコボリンカルシウム(商品名:ロイコボリン)が使用されることもある。重篤な骨髄抑制が起きた場合など、緊急を要する際には同剤の投与が必須である。しかし、胃腸障害や口内炎の緩和には、葉酸でも有効であることが確認されており、ロイコボリンの薬価が高いことなどから、保険適応外でも安価な葉酸が選択されることが多い。