一番大切なこと
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20111101ddm004070018000c.html
「ランセット」が今年9月、日本特集号を発行した。
テーマは「国民皆保険達成から50年」。
1961年に始まった国民皆保険制度を軸に、日本の健康施策
医療制度の歩みと課題をまとめる論文が掲載された。
その中で強調されているのが、たばこ対策の重要性だ。
現代日本で国民の健康を脅かす病は、がんや心臓病、糖尿病などの生活習慣病だ
東京大などがまとめた論文は
これらの生活習慣病が死亡につながる最大の要因が喫煙だと指摘した。
禁煙によって回避できる死亡は、かなりの数に上り、別の論文は
たばこ対策が進まなければ日本の健康水準が低下するかもしれない、と警告した。
生活習慣病には世界も注目する。
国連は9月、非感染症の病気(日本でいう生活習慣病)に関する
初のハイレベル会合を開き、各国に迅速な対策を求める政治宣言を採択した。
対策の1項目に挙がったのが、たばこ対策だ。
欧米は積極的に禁煙政策を進め、がんによる死亡を大幅に減らした。
一方、日本は、飲食店など公共の場所での受動喫煙を防ぐ取り組みをはじめ
たばこ対策は遅れ、がん死亡が増えている。
生活習慣病やその死者を減らすため、禁煙が一番の近道であることは医学的に明白だ。
「震災復興」や「個人の好み」、ましてや党利党略のための議論ではなく
「国民の健康を守る」との視点に立つことこそ、一番大切なのではないか。
少なくとも、経済協力開発機構加盟国で最も肥満者の割合が少ない日本で
メタボ重視の健康施策をするより、たばこ対策を進める方が理にかなっている。