あなたは寒い人? 東洋医学で体質見極め、不調解消



東洋医学「証」を立てるところから始まる。
個人の体質=「証」を見極めることを重視するのが、東洋医学の特徴なのだ。
ここでは最も基本的な分析方法の一つ、「熱証」&「寒証」から自分の体質を探ってみよう。


中医師は患者の不調や全身の状態などから体質=“証”を見極め、
初めて治療方法を決定するのです」
と、東京大学大学院医学系研究科特任助教の喩静(Yu Jing)さん。


東洋医学では証を立てる方法がいくつかあるが、
最初に明らかにすべきなのが「熱証」と「寒証」という最も基本的なタイプだ。


「熱証は汗っかきで顔が赤く、ほてりが強い人。
反対に寒証は局所が冷えていて顔色が悪く、温かいものを飲みたがる」
と、東洋医学初心者にも体質が見極めやすい。


さらに2つの体質は、それぞれ「実証」と「虚証」とに分けられる。
体に必要な“気(き)・血(けつ)・水(すい)”が不足しているのが虚証。


病気の原因となる“邪気”の強い影響を受け、
気・血・水の巡りが悪い状態が実証だ。


「虚証の人は病気への抵抗力が弱く、元気がないのが特徴。
反対に、実証は一見、体力はあるが、ほてりや充血などが起こりやすい」。

【 熱証 】顔が赤くて汗っかきのほてりタイプ

代謝が活発過ぎるタイプ。
汗の量が多くて顔が赤く、いつも口が渇いているので冷たい飲み物が大好き。
手足などの局所がほてったり、目の充血が起こったりしやすい。
特に、気温の高い春夏になると、下のような特徴が強く出現する。
長期間ストレスを受けることで気の巡りが悪くなり、熱証となることも。


→ 熱証はこんな人
□ 汗をよくかく
□ 口が渇きやすい
□ 赤ら顔
□ 手足がほてりやすい
□ 体臭が強い


→ 熱証の人をさらに分けると


「実証」(体力のある人)
体内に熱が停滞している状態の人が多い。
興奮しやすくて落ち着きがなく、せっかち。
胸の灼熱感や急な頭痛、発熱、喉の痛みなども起こりやすい。


「虚証」(体力のない人)
体が弱り、熱を冷ます力が足りなくなることから熱感が増大する。
のぼせや寝汗はその現れ。女性の更年期ののぼせ症状がある人は、このタイプが多い。



【 対処法 】 熱証の人は、熱を冷ますべき
辛いものやアルコールなどの刺激物は控えめに。
夏は、体をクールダウンさせる旬の野菜や緑茶などを積極的に取ろう。

【 寒証 】 顔色が悪く手足が冷たい寒がりタイプ

生理機能が低下しているタイプ。
顔が青白く、手足など局所が冷える。
温かい飲み物を好む。
トイレが近く、排泄物の色は薄くて臭いも少ない。
下痢を起こしやすい。
秋冬が苦手で、寒くなると関節が痛むなどの症状があり、温めると楽になる。
男性より女性のほうが多く、年を取ると寒証に移行しがち。


→ 寒証はこんな人
□ 顔色が白い
□ 温かい飲み物が好き
□ 手足がいつも冷えている
□ 頻尿で下痢を起こすことが多い
□ 冷えることで痛む(関節痛など)症状がある


→ 寒証の人をさらに分けると


「実証」(体力のある人)
体に熱を保つ力は持っているが、冷たい食べ物、
飲み物を過剰に取ることで体内に冷えがたまった状態。
あまり汗をかかない人、薄着を好む若者に多い。


「虚証」(体力のない人)
体を温める“気”の不足により体の芯から冷えている状態。
極度の寒がりがこのタイプ。
声が小さくて元気がなく、疲れやすい。中高年や重病を患う人に多い。



【 対処法 】 寒証の人は、体を温めるべき
夏でも冷たい飲み物は避けたほうがいい。
ショウガやシナモンなど、体を温める香辛料などを積極的に取ろう。


◆さらに体が置かれている状況をチェック 〜5つのタイプ(証)を知ろう〜

【 気虚 】 生命力に乏しい 典型的な虚弱体質の人

→ 気虚はこんな人
□ 疲れやすく気力に乏しい
□ 朝起きるのが苦手で、すぐに眠くなる
□ 立ちくらみがある
□ 胸がドキドキしやすい
□ 風邪をひきやすい


生命エネルギーである“気”が不足しているタイプ。
内臓や免疫機能を働かせる“気”の不足から、
疲れやすくて胃腸の働きが悪く、風邪をひきやすい虚弱体質に。
“気”は体を温めるため、冷え症にもなりやすい。
汗をかきやすく、女性の場合は月経中に下痢をしやすく、
月経の量が多くて色が薄い傾向がある。
気を養うためには過労や冷えることを避け、十分な睡眠をとること。
補気作用のある穀物や鶏肉、キノコ類を食べるのもいい。

【 気滞 】 “気”の巡りが悪く、すぐにイライラする人

→ 気滞はこんな人
□ イライラしていて怒りっぽい
□ おなかが張る、月経前に胸が張る
□ 喉に異物感がある。胸がつかえる
□ げっぷやガスが出やすい
□ 下痢と便秘を繰り返している


“気”が停滞し、体内での巡りが悪くなっているタイプ。
イライラしていて怒りっぽいのが特徴。
長期間ストレスにさらされることで起こすケースが多い。
張りや痛みを引き起こすことが多く、ガスがたまっておなかが張る、
女性は月経前に乳房や下腹部が張るなど。
ストレスが強いと痛みも増大しやすい。
頭に気が巡らなくなると、めまいを起こすことも。
手軽な解消法は、運動をしたり、ジャスミン茶など香りのいいお茶を飲んだりすること。

【 水毒 】 水の巡りが悪くてむくみやすいタイプ

→ 水毒はこんな人
□ むくみがある
□ 胃からチャポチャポとした水音がする
□ 雨の多い季節は具合が悪くなる
□ 太り気味でやせにくい
□ 痰(たん)や唾がよく出る


水の代謝が悪くなり、体内に過剰にたまっている状態。
「水を飲んでも太る」とは、まさしくこのタイプ。
体が重く、だるくなるのが特徴。
手足がむくみやすく、尿がすっきり出なくて量が少ない。
または、嘔吐やめまいを起こしやすく、雨の多い梅雨時になると具合が悪くなりがち。
紅茶、プーアール茶、ウーロン茶、コーヒーは
水の代謝を良くする「利水」作用があるので、温めて飲むと改善効果が。
冷たいお茶は逆効果なので注意。

【 血虚 】 肌ツヤ、顔色の悪い栄養不足タイプ

→ 血虚はこんな人
□ 肌や髪にツヤがなく、乾燥している
□ 手足に引きつりやしびれを感じる
□ 不安感が強く、夜なかなか寝つけない
□ 便が乾燥して硬い
□ めまいがして疲れやすい


体中に栄養を届ける“血”が不足したタイプ。
血色が悪く、立ちくらみや手足のしびれなどが起こりやすい。
栄養不足から髪や皮膚は乾燥し、爪も割れやすくなる。
不眠や不安感なども血の不足から起こる症状。
出産や手術で大量の血を失った後は、ほぼ血虚になる。
また、月経がある女性もなりやすい。
血を養うには、十分な睡眠と「補血」作用のある食べ物をしっかり取ることが有効だ。
ナツメや赤身の牛肉などの食べ物がお勧め。

【 お血 】 血の巡りが悪い循環不良タイプ

→ お血はこんな人
□ クマ、くすみ、シミが多い
□ 肌がどす黒く黒ずんでいる
□ 女性なら月経痛がひどい
□ 冷えや肩凝りがある
□ 頭痛などの痛みが強い


“血”の巡りが遅い、または停滞している状態
気虚血虚気滞が原因となってお血につながるケースも。
皮膚は黒ずみ、かさついている。
顔色はどす黒く、目の下のクマが目立つ。
頭痛や月経痛などの痛みが強く現れるのも特徴。
血が滞って起こる疾患(心筋梗塞脳卒中、痔)のリスクが高い。
お血の大敵は冷え。体をよく温めたり、運動したりすることが肝要。
血を巡らせるショウガや玉ネギ、青魚、緑黄色野菜などの食べ物を取りたい。


喩 静(Yu Jing)さん
東京大学大学院医学系研究科、漢方生体防御機能学講座特任助教
中国・山東中医薬大学卒業。12年間の内科医勤務を経て来日。
東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座医学博士課程修了。
同大学漢方生体防御機能学講座助手を経て、現職。
『薬膳・漢方 食材&食べ合わせ手帖』(西東社)を監修した。