長引く体の不調、漢方薬で改善

長引く体の不調、漢方薬で改善 冷え・けんたい感…
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体が疲れやすい、冷え性が改善しない、ぐっすり眠れない……。
医師にかかっても、なかなか治らない体の不調を改善するにはどうすればよいか。
漢方薬の処方で体質を改善し、病気に負けない体づくりを目指すのも選択肢のひとつだろう。
専門家にポイントを聞いた。


「西洋医学感染症に対する抗生物質やけがを治す外科手術などで人類に大きな貢献をした。
東洋医学にも一部の感染症に対応しすぐ効く漢方薬があるが、
多くは体質や生活習慣病などをじっくり治す。ストレスの多い現代社会には有効な処方だ」
北里大学東洋医学総合研究所の医師、櫻井正智さんはこう話す。


伝統中国医学は約1500年前に日本に伝わり、漢方医学として発展した。
中国が主産地の阿膠(あきょう)や黄連、葛根など複数の生薬を組み合わせた
「方剤」を使い、煎じた液や粉末剤を飲むことで様々な病気を治してきた。


◆抵抗力など診断
漢方は病態の診断を「証」と呼ぶ基準でみる。
「体力が病気より劣勢で体が冷えていれば『陰証』、
体力が病気より優勢で体にのぼせや火照りがあれば『陽証』とする」
と説明するのは、福島県立医科大漢方医学講座教授の三潴(みつま)忠道さん。
診断の物差しはさらに病気に対する抵抗力が弱い「虚証」と抵抗力が強い「実証」がある。
また、生命エネルギーを示す「気」、血液の「血」、血以外の体内水分の「水」をみて、
これらのバランスが崩れたときに病気になるとみる。


ただ、十分な科学的な証明はなく、医学界の中でも「効果が分からない」という声がある。
一部の生薬はどうやって病気を治すか、そのメカニズムが明らかになってきたが、
多くは未解明のままだ。しかし効能は広く社会に認められ、
現在薬事法で医薬品として認められ、健康保険が適用される漢方製剤は148種あり、
医師の8割が処方しているとの報告もある。


漢方の特徴は病態をきめ細かくみて、その変化に合わせて方剤を処方する点だ。
たとえば風邪。
個人差はあるが、おおむね悪寒や発熱のひきはじめで、
うなじなどがこわばる場合は葛根湯、関節が痛い場合は麻黄湯
鼻水やくしゃみが出る場合は小青竜湯、のぼせる場合は桂枝湯
などの方剤を組み合わせて処方する。


風邪が長引いて舌に白いコケがある場合は柴胡桂枝湯
だるい場合は補中益気湯
せきも細かく見て、のどに粘りのあるたんがからむときは半夏厚朴湯、
のどが乾燥し、たんが張り付くときは麦門冬湯と方剤を変えていく。


冷え性も状態を細かく見る。
全身が冷え、だるいときは茯苓四逆湯、
腰や太ももが冷えるときは苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)、
膝から下が冷えるときは八味地黄丸と方剤を変える。
三潴教授は「冷え性には全身型と上熱下寒型、末梢循環不全型の3種類があり、
それぞれの病態に合わせた処方が必要」という。


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