Z薬が認知症患者の骨折、脳卒中リスクに

Z薬が認知症患者の骨折、脳卒中リスクに

https://medical-tribune.co.jp/news/2020/1203533853/


認知症患者にはゾルピデムやゾピクロンといった
Zで始まる非ベンゾジアゼピン系薬、
いわゆるZ薬(Z-drug)が処方されることが多い。
英・University of East AngliaのKathryn Richardson氏らは
英国の住民コホート研究において、
高用量のZ薬を処方された認知症患者で骨折や転倒、
脳卒中のリスクの上昇が示されたと
BMC Med(2020; 18: 351)に報告した。

英国の2万7,090例を解析

認知症患者では、不眠症や睡眠の断片化、日中の過眠、
夜間の徘徊といった睡眠に関連する問題を抱えている人が
約60%を占めていることが報告されている。
こうした患者に対しては高頻度にZ薬が処方される。

また、Z薬の使用が高齢者における転倒や骨折などの
リスク上昇に関連していたとする観察研究の結果も報告されているが、
認知症患者を対象にこれらの関連性を検討した研究はほとんどなかった。

そこでRichardson氏らは今回、
英国の病院データであるHospital Episode Statistics(HES)や
国家統計局 (ONS)の死亡データなどにリンクされた
Clinical Practice Research Datalink (CPRD)を用いて、
認知症患者におけるZ薬の処方と転倒、骨折、死亡、感染症
虚血性脳卒中静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクとの関連について検討した。

解析対象は、2000年1月~16年3月に認知症と診断された2万7,090例。
このうちZ薬を新規処方された3,532例における有害事象を、
睡眠障害があるが鎮静薬を使用していない群(1,833例)
②家庭医(GP)の診察を受けた鎮静薬を使用していない群(1万214例)
ベンゾジアゼピン系薬を新規処方された群(5,172例)-と比較した。
なお、Z薬はゾピクロン7.5mg以上に相当する量、
ベンゾジアゼピン系薬はジアゼパムで5mg以上に相当する量を高用量と定義した。

対象者の平均年齢は83歳(標準偏差7.7)で、62%が女性だった。
また、Z薬を処方された3,532例のうち
584例(17%)が高用量で治療が開始されていた。

ベンゾジアゼピン系薬と同程度またはそれ以上のリスク上昇

Cox回帰モデルを用いた解析の結果、
高用量のZ薬を処方された患者では、
睡眠障害はあるが鎮静薬を使用していない患者と比べて
骨折リスクが1.67倍〔ハザード比(HR)1.67、95%CI 1.13~2.46〕、
大腿骨近位部骨折リスクが1.96倍(同1.96、1.16~3.31)、
転倒リスクが1.33倍(同1.33、1.06~1.66)、
虚血性脳卒中リスクが1.88倍(同1.88、1.14~3.10)だった。

また、高用量のZ薬を処方された患者群における
これらのリスクの上昇は、
GPの診察を受けた鎮静薬を使用していない患者群との比較においても認められた。
さらに、高用量のZ薬が処方された群における
骨折や転倒、虚血性脳卒中のリスクの上昇度は、
高用量のベンゾジアゼピン系薬が処方された患者群における
これらのリスクの上昇度と同程度であるか、それを上回っていた。

一方、Z薬の処方と死亡、感染症、VTEのリスクには関連が認められなかった。
また、ベンゾジアゼピン系薬を処方された群と比べてZ薬を処方された群では
死亡リスクが低かった(HR 0.73、95%CI 0.64~0.83)。

以上を踏まえ、Richardson氏らは
認知症患者に対する高用量Z薬の処方は、骨折および脳卒中のリスクの上昇と関連していた。
また、Z薬によるリスクの上昇度は
高用量ベンゾジアゼピン系薬と同程度または同薬を上回っていた」と結論。
その上で、「認知症患者には可能な限り高用量のZ薬の使用を避け、
薬物療法を優先的に考慮すべき」との見解を示している。

また、共同研究者で英・Aston UniversityのIan Maidment氏は、
「Z薬は既に認知症患者の不眠症治療に広く使用されているが、
使用期間は最長で4週間にとどめておくことが勧められる」と説明。
また、「今回の研究結果は、GPや薬剤師などの医療従事者が、
長期間Z薬を使用している患者について
あらためて評価を行うことの重要性を示したものだといえる」
と述べている。