フランドルテープ

貼付剤のマークが気になる狭心症患者
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/


◆Question

狭心症の治療で内科診療所に通院している 56歳の男性が、
薬局で薬を受け取る際、Kさんは次のような質問をしました。


フランドルテープは夏場になると、ワイシャツの上から透けて見えてしまいそうです。
目立ちにくいように、太ももなどに貼ってはいけませんか。
それから、もし剥がれてしまった場合は、どのようにすればよいですか。

◆服薬指導

フランドルテープの表面には、白い色で、
お薬の名前と心臓の病気に効果があることを示すマークが印刷されています。
これは、万が一、救急車で病院に運ばれた場合などに、
医師や救急隊員にこの貼り薬を見つけやすくして、
心臓の病気であることに気付いてもらうためのものです。
ただ、普段は目立たないようにするために、
ワイシャツの上からは透けて見えにくいような配色になっていますから、
一度、鏡でどのくらい透けて見えるか確認されるとよいと思います。
それでも、どうしても気になる場合には、胸や背中に貼る代わりに、
太ももの部分に貼っても構いません。
万が一の場合に、医師が発見しにくくなってしまう可能性はありますが、
太ももに貼っても薬の効果自体は、ほとんど変わらないことがわかっています。
それから、剥がれてしまった場合ですが、
気が付いたらすぐに貼り直すようにしてください。
この貼り薬は、皮膚にくっ着く部分が軟らかくできていますので、
体を動かしたりしても比較的剥がれにくいとは思いますが、
剥がれてしまった後に貼り直した場合でも、
粘着剤の付きが悪くなることはありませんし、
効果の面でも問題ないことがわかっています。

◆解説

1970年代以降、薬物伝送システム(drug delivery system:DDS)の研究が進み、全身作用性の経皮吸収剤が開発されてきた。わが国では、80年代前半の虚血性心疾患治療薬を皮切りに、現在ではホルモン補充療法剤、喘息治療薬、禁煙補助剤、癌性疼痛用剤が使用可能になっている。

 硝酸イソソルビド貼付剤は、83年にわが国で最初に実用化された全身作用性の経皮吸収剤である。その後、小型化や粘着剤の変更などの改良が加えられ、現在のフランドルテープSに至っている。同剤は、白色半透明の貼付剤で、通常1回1枚を24〜48時間ごとに貼り替える。

 同剤の貼付場所については、添付文書では胸部、上腹部、背部のいずれかとされているが、インタビューフォームには、大腿部に貼付しても血中濃度推移に有意な差がないことが記載されている。したがって、Kさんのように、同剤表面に印字された文字(製品名)やマーク(薬効マーク)が気になり、目立たない場所に貼付することを希望する場合には、大腿部に貼付しても問題はないと考えられる。

 もっとも、この文字やマークは、白色のワイシャツの上から透けて見えにくいように工夫されている。この文字とマークは、救急治療時などに、医療従事者が同剤を発見・認識しやすいように付けられたものである。だが、日常的には患者のプライバシー保護の観点から目立たないことが求められるため、人間工学的な観点から検討され、「見えているけれど、あまり気にならない色」として、白色が選択されている。したがってKさんには、夏場でも、ワイシャツの上からであれば見えにくいことを説明し、それでも気になるようなら、大腿部に貼付するようにアドバイスするのが妥当だろう。

 一方、Kさんが質問している「フランドルテープSが途中で剥がれてしまった場合の対処法」に関しては、剥がれたテープをそのまま貼り直すように指導するのが適当である。同剤では、初回貼付時と再貼付時で、硝酸イソソルビドの経皮吸収速度(血中薬物濃度推移)および粘着力(剥離力)を比較したところ、有意な差は認められなかったことが報告されている。

 この特徴は、同剤に使用されている粘着剤の物性によるところが大きい。同剤の粘着剤は、皮膚への粘着力が弱いため、剥離時に皮膚角質層が粘着面に付着しにくく、再貼付時も粘着力は低下しないのである。その一方で、粘着力は弱いものの、他の貼付剤と比較しても、貼付中の剥がれやすさにはほとんど差がないという報告もある。これは、同剤の粘着剤層が柔軟なゲルで構成されているため皮膚への密着度が高く、皮膚の動きに貼付剤が追随しやすいためだと考えられている。