ヤモリテープ

「ヤモリの足」から生まれた最先端のテープ
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2705O_X20C12A4000000/

ヤモリの足の微細構造


生物や植物などの持つ構造や仕組み、
形状などを工業製品に応用しようという生物模倣技術(バイオミメティクス)
の研究や製品展開が急速に盛り上がっている。


日東電工はヤモリの足の裏にヒントを得た接着テープ「ヤモリテープ」を開発した。
ナノテクノロジーの進化で、生物が持つ微細構造を忠実にまねることができるように
なったことが技術開発を後押ししており、利用範囲は一気に広がりそうだ。


日東電工が開発したヤモリテープは、
直径数ナノ〜数十ナノメートルのカーボン・ナノチューブ
1平方センチメートル当たり100億本の密度でびっしり並べたもの。
せん断方向の接着力に優れ、
わずか1平方センチメートル程度の面積のテープで500グラムを保持できる。


これはヤモリの接着力の8割強程度だが、実用的な接着テープとしては遜色ない。
それでいて、めくれば簡単に剥離できる。
従来の粘着テープのように粘着剤が残ることはなく、テープ自体も繰り返し利用できる。


ヤモリの接着の仕組みが解明されたのは、2000年ごろのことという。
電子顕微鏡でヤモリの指先を観察したところ、
足の裏に細かな毛が1平方メートル当たり10万〜100万本の密度で密生しており、
さらに先端が100〜1000本程度に分岐した構造を持つことが分かった。
先端の分岐した毛の密度は、同10億本以上。この細かな毛の1本1本が、
対象物に極めて近い距離まで接近するため、原子や分子間に働く
ファンデルワールス力によって接着する。


カーボン・ナノチューブを使うことから、現時点では、
高価で大量供給が難しいという難点もある。
このため、利用分野は当面、分析試料固定用テープに限っている。
今後、量産技術を向上させ、低コスト化を図って15年の一般販売を目指す。


基本原理が発見・解明されてから5〜7年すると、
それを工学的に応用する研究が大きく進む。
これはヤモリに限らず、
「ハスの葉の撥水効果」
「モルフォ蝶の構造発色」
といったテーマでも同様であるという。


日本企業ではシャープが、
08年から生物の形状を部分的にまねて効率や性能を高めた製品、
例えば「猫の舌にヒントを得たサイクロン掃除機」
「海を渡る蝶にヒントを得た扇風機」などで生物模倣技術の活用を加速させている。
積水化学工業も木陰を模した屋外施設用日よけ材「エアリーシェード」を発売している。