前立腺の健康に“食事”が重要
ライフスタイルマネジメントで前立腺がんの予防を
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1403/1403011.html
男性のがんの中で現在増加率がトップなのが前立腺がんである。
特にわが国では前立腺がん死亡率の増加が著しく,
最近20年間の増加は主要26カ国の中でメキシコに次いで2位である。
順天堂大学泌尿器外科教授の堀江重郎氏は,
2月17日に東京都で開かれたプレスセミナーにおいて
わが国における前立腺がんの疫学,手術療法から化学療法の現況などを幅広く講演。
その中で,前立腺がんの予防についても言及し,
「栄養バランスの良い食生活で,前立腺がんは予防できる」と話した。
肥満は前立腺がんの大きな原因の1つ
堀江氏によると,前立腺がんは
生活環境と非常に相関があることが従来から報告されているという。
米国では既に前立腺がんは減少傾向にあるが,
わが国では急激に増加していることが問題となっている。
その背景には,日本人の食生活の変化も影響している。
すなわち,この50年くらいの間に,日本人の1日平均エネルギー摂取量は
減少しているにもかかわらず,脂肪摂取量は急激に増加している。
◆脂肪の多量摂取は前立腺に“負の作用”
また,堀江氏は「食事は前立腺の健康に重要」と強調。
特に脂肪の摂取量が多いことは,前立腺にとって“負の作用”を及ぼすと考えられ,
「前立腺がんを防ぐには,
動物性脂肪,塩分を控えた栄養バランスの良い食生活が大切である」と言う。
例えば,無調整の牛乳コップ1杯は,ベーコン5枚分の脂肪量とほぼ等しい。
牛乳消費量は前立腺がん発生率と相関することも報告されている。
乳製品の摂取量が多い北欧などでは前立腺がんが多いことも知られている。
堀江氏は「40歳を過ぎたら,男性は
できるだけ低脂肪の牛乳を飲むようにした方がよいでしょう」と話した。
また従来がんの予防に良いとされていた魚油などのω3系脂肪酸やオリーブ油も,
摂取量が多いと前立腺がんの危険因子となることが最近報告されている。
焼き鳥の油も前立腺がんには危険因子となることも報告されているという。
◆大豆食品の摂取で発症リスクが30%減少
一方で堀江氏は,前立腺がんの予防に良い食品として,
大豆,トマト,ウコン,魚,緑茶,ブロッコリーなどを挙げた。
トマトジュース,ケチャップが前立腺がんのリスクを減少させることも示されている。
堀江氏は「同じイタリア人でも,ラザニアが好きな人とカルボナーラが好きな人では,
後者の方が前立腺がんの発症数が多いというデータも出ている」と述べた。
大豆食品の摂取については,
前立腺がんのリスクを約30%減少することも示されているという。
◆ライフスタイルの改善でPSA値を下げる
さらに,堀江氏は「ライフスタイルの変化が,
前立腺特異抗原(PSA)値を下げることも示されている」と指摘。
その一例として,野菜中心で魚,ビタミンなどの摂取をする食生活に変え,
1日30分の歩行を週に6日行うなどのライフスタイルを変化させた群では,
変化させなかった群に比べてPSA値が有意に減少したとする報告を紹介。
またライフスタイルが変化して2年後のフォローアップでは,
手術,放射線治療,ホルモン治療の治療開始時期が遅かったことも紹介し,
「前立腺がんや乳がんなど,特に経過の長いがんでは,
ライフスタイルのマネジメントが非常に重要」と指摘した。
なお順天堂大学病院では,前立腺がん患者に対し,
好きな食べ物や毎日のおおよその食生活などの“食べ物の調査”を行っているという。
堀江氏は「前立腺がんを発症した人はやはり,
トンカツや揚げ物が好きな人が非常に多い。
逆に言うと,毎日塩ザケとみそ汁のような食生活を送っている人は,
前立腺がんにならない」と話し,
特にPSA監視療法の患者に対しては,食生活の改善,指導が大切であると考え,
患者の家族も含めた指導に当たっていることを紹介した。