禁煙後の体重増加で大血管症発症リスクが増加する。○か×か?
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/noto/201308/532063.html
能登洋(国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝・内分泌科 医長)
表 禁煙による大血管症リスク
◆禁煙半年以降から大血管症リスクが軽減
喫煙はインスリン抵抗性を増大させ、
2 型糖尿病リスクの増加や血糖コントロール悪化につながる。
また、大血管症のリスク(糖尿病では喫煙による冠動脈疾患のリスクは約1.4倍)
や種々の癌のリスクも増加する。
幸いこれらのリスクは多くは可逆的であり、
禁煙後半年以降からリスクが漸減する報告がある。
しかし難点は禁煙後の体重増加である。
一般に、禁煙後1年で約5kgの体重増加が報告されている。
ただし変化率は個人差が大きく、禁煙後に体重減少する人も16%いる。
そのため、禁煙後の体重増加に伴う大血管症や糖尿病のリスク増加により、
禁煙による効果が減少または効果より害が上回る可能性がある。
実際、日本人対象の観察研究では、禁煙後短期間に
糖尿病発症リスクが増加することが報告されている。
では、ここで問題。
禁煙後の体重増加で大血管症発症リスクは増加するだろうか?
答えは、現時点の実証報告によると「×」である。
近年発表されたエビデンスによると、
非糖尿病患者では禁煙により結果的に大血管症リスクが有意に低下し、
糖尿病患者でも同等の低下傾向を認めた。
同様の結果は女性対象の別研究でも報告されており、
糖尿病患者でも冠動脈疾患リスクに有意な低下を認めた。
積極的に禁煙指導をすべきである。
禁煙法としては漸減法と中断法の間に成功率の有意差はない。
なお、健康への害の警告をたばこの箱に
画像で印刷することを法定化する国が近年増えている
表 たばこの箱に画像で警告を印刷することが法定化されている国