炭水化物ダイエットも間違えば、肥満の原因に
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0601C_W3A600C1000000/
日本糖尿病学会が3月に
「炭水化物を制限しての減量は、科学的根拠が不足している」との提言を発表。
これをきっかけに、炭水化物を巡る議論が沸き上がり、注目を集めている。
ダイエット法としても人気の「糖質制限食」に学会が待ったをかけたためだ。
学会が発表した「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」には、
次のように書かれている。
「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して
減量を図ることは(中略)これを担保するエビデンス(科学的根拠)が不足しており、
現時点では薦められない」
一読すると“糖質制限に待った”とも読めるが、提言に至った経緯では、
むしろその前の「総エネルギー摂取量を制限せず」の部分が重視されたようだ。
千葉大学大学院代謝生理学の三木隆司教授がこう話す。
「ここ数年、糖質制限食が流行し、『ご飯抜き、肉やナッツは食べ放題』
という食事法を行う患者さんが目立ち出した。
だがこういうやり方だと、多くの人が結局、太ってしまう。
学会はそこに歯止めをかけたといえる」
糖質制限食を薦める一部の書籍には
「糖質以外はいくら食べてもいい」などと書かれている。
いかにも魅力的な言葉だが、それで太っては本末転倒だ。
◆「日本糖尿病学会の提言」のポイント
1. 糖尿病の治療に関する提言であり、一般の食事の話ではない。
2. 炭水化物が少ない食品(肉、魚、ナッツなど)を
無制限に食べることによるカロリーオーバーを特に問題視している。
3. 最適な炭水化物の割合は、現時点では不明。今後の研究課題としている。
肝心の糖質制限についてはどう考えたらいいのか。
糖尿病の食事療法は長年「カロリー制限」と「糖質制限」の間で揺れてきた。
近年、世界的に糖質制限が注目されているが、研究の結論は出ておらず、
「理想の栄養バランスはまだわからない」(三木教授)。
また、米を多く食べてきた日本の場合、
食文化とどうマッチさせるかも大切なポイントになる。
順天堂大学抗加齢医学講座の白澤卓二教授は、
「学会の提言はあくまで糖尿病の治療食に関するもの。
健康な人は、糖質の量より、むしろ“質”に気を配るほうがいい」と話す。
質とは、「糖質の精製度」のことだ。
精製度の高い糖質(白砂糖、白米など)は
脳の報酬回路を刺激する作用が強く、摂食量が増えて肥満を招きやすい(下)。
「これは麻薬中毒と同じメカニズム。でも精製度の低い糖質なら、こうはならない」
(白澤教授)。もちろん微量栄養素などの面でも低精製品は有利だ。
ちなみに白澤教授は
「通常の食事はおかずにも糖質が多く含まれる。
ご飯を抜いても現実には“極端な糖質制限”までいくのは困難だろう」と話す。
ご注意! 白米や白砂糖は脳の「報酬回路」を刺激する
白いご飯や甘いお菓子がなかなかやめられないのは、
脳の中で“中毒”的な反応が起きるためだという。
甘い刺激は、脳の報酬回路を興奮させる。
すると強い快感が生じ、一度味わうと病みつきになる。
刺激が繰り返されると脳が慣れてきて、より強い刺激でなければ興奮できなくなる。
だから必然的に食べる量が増え、太ってしまう。
精製度の低い糖質では、こうした反応は起こらない。
〜健康な人のダイエット目的なら 炭水化物はこう食べよう〜
【グループ1】主食の穀類→精製度の低いものに変える
◆ 「 」内の精製度の低いものを選ぶ
・ 米→「玄米、分づき米、雑穀入りご飯」
・ パン類→「全粒粉のものやライ麦パンなど」
・ パスタ、麺類→「十割そば、全粒粉パスタなど」
【グループ2】甘いもの→なるべく減らす。食べるなら、精製度の低い甘味のものを選ぶ
◆ なるべく減らす
・ 清涼飲料 ・ 菓子
◆ 精製度の低いものを選ぶ
・ 野菜ジュース、ココナッツジュースなど
・ 黒糖、ハチミツ、麹などを使ったもの、ドライフルーツなど
【グループ3】その他の食材→食物繊維や微量栄養素が豊富。積極的に食べる
◆ 積極的に食べる
・ 野菜、果物 ・ 芋、豆