消化管運動改善薬

笹嶋勝「クスリの鉄則」
消化管運動改善薬の特徴
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/tessoku/201209/526662.html


メトクロプラミド(プリンペラン

「中枢」に存在するドパミンD2受容体に拮抗し、消化管運動を促進します。
また、化学受容器引金帯(CTZ)を介して悪心を抑制します。


片頭痛の患者にも頓服で使用されることがあります。
これは、悪心がなくても、片頭痛発作時は消化管運動が抑制されて
薬剤の吸収が落ちるために、消化管運動促進目的での処方です。


脳血液関門(BBB)を通過することから、中枢神経系の副作用が現れます。
特に錐体外路症状に注意が必要です。高プロラクチン血症も起こります。
また眠気やめまいが起こることがあるので、添付文書には
「自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること」
と記載されています。


症状の原因が上部消化管にあるときに向いています。
下部消化管への効果はほとんど認められていません。

ドンペリドンナウゼリン

「消化管」に存在するドパミンD2受容体に拮抗し、消化管運動を促進します。
BBBは通過しませんが、CTZはBBB外にあるので、CTZを介して悪心を抑制します。


慢性胃炎などによる症状以外に、抗悪性腫瘍剤やレボドパ製剤による消化器症状
小児では、周期性嘔吐、上気道感染症による嘔吐にも保険適用があります。
レボドパ製剤による悪心・嘔吐には中枢のドパミンD2受容体に拮抗する
メトクロプラミドは使用できませんから、本剤を使用します。


症状の原因が上部消化管にあるときに向いています。
下部消化管への効果はほとんど認められていません。


内服薬と坐剤を比較すると、即効性は内服薬の方が優れます。
勘違いしている人も多いです。
坐剤は、内服が困難なほどの嘔吐がある場合などに用いられます。
なお、ドンペリドン坐剤の成人用製剤は、胃・十二指腸手術後と
抗悪性腫瘍剤投与時しか保険適用がありません。


副作用としては
女性化乳房、プロラクチン上昇などの内分泌系の症状が現れることがあります。
また、錐体外路症状も出ることがあります。
特にメジャートランキライザーとの併用には注意が必要です。
眠気、めまいが起こることがあるので
「自動車の運転等危険を伴う機械操作に注意させること」とされています。


今回取り上げた薬剤の中で唯一
妊婦への投与が禁忌ですので、注意する必要があります。

トリメブチンマレイン酸塩(セレキノン)

消化管運動が停滞しているときは運動を促進させ
亢進しているときには低下させるという器用な作用を持ちます。
この薬剤は、上述した他の薬剤と異なり、オピオイド受容体に結合して作用します。
ドパミンセロトニンを介した作用は持ちません。
消化管運動に対する作用の二面性については、以下のような解釈があります。


(1)低濃度の場合は、交感神経にあるμ受容体に結合するとノルアドレナリン
分泌が抑制されることになり、アセチルコリンが分泌されるようになる
(2)高濃度の場合は、交感神経に加えて副交感神経のμ受容体にも結合し
アセチルコリンの分泌は抑制されるようになる


適応症に過敏性腸症候群があります。
この場合には、添付文書上でも6錠まで使用可能であり、比較的高用量を用います。
なお、薬理作用として末梢性鎮吐作用があると添付文書には記載がありますが
悪心・嘔吐に関する保険適用はありません。
症状の原因が、上部消化管のみならず下部消化管にあるときにも向いています。