高齢者の貧血

高齢者の貧血注意 持病に隠れ自覚しにくく
http://www.nikkei.com/life/health/article/g=96958A96889DE1E6E6EBE1EBEAE2E2E0E2EBE0E2E3E39F88E6E2E2E3;p=9694E0E4E3E0E0E2E2EBE1E3E2E3




若い女性の病気と思われがちな貧血だが、高齢者でも10人に1人は患っている。
持病の症状に隠れて自覚しにくいが、放置すれば寝たきりになる恐れがある。
栄養不足が原因と指摘する専門家も多く、動物性たんぱく質を十分に取るなど
食事改善を心がけてほしいと話す。


高齢者の貧血で多いのは
血液を作る骨髄の働きは正常だが、鉄分が不足する鉄欠乏性貧血だ。
女子栄養大の吉野京子さんは
「高齢者は食事の量が少なくなりがちでエネルギーやたんぱく質、鉄が不足。
吸収を助けるビタミンCも足りない」と話す。


一般的にドキドキする、微熱がある、だるいといった症状は出るが
「高齢者と若年者では異なる症状の場合が多い」
(東京都健康長寿医療センター血液内科の宮腰重三郎部長)


宮腰部長は
狭心症などの持病が悪化したようにみえ、しかもゆっくり進むので気づきにくい。
ヘモグロビン値が6〜7グラムに下がっても分からないことがある」と話す。
狭心症の人が貧血になると、心臓は血液を早くまわそうと働き、負担が大きくなって胸が痛む。
周囲の人も認知症うつ状態の悪化と勘違いすることもある。

「酸素が各臓器にいかず、忘れっぽくなったり、活動状態が悪くなったりする」
福島県会津総合病院血液内科の大田雅嗣氏)。
貧血治療で改善が見られることも多いという。


鉄不足からだけでなく、ほかの疾患や治療薬がもとになる貧血も多い。
「因果関係は分かっていないが、鉄不足による貧血なのに、鉄を補う薬を与えても
改善しない場合、ピロリ菌を除去すると貧血が軽減する場合がある」(大田氏)。


胃がんなどで胃を切除した後に気をつけたいのは、ビタミンB12不足による貧血
ビタミンB12は血液細胞など細胞分裂に必要だが、胃が無いと腸で吸収されるまでの間
ビタミンを保護することができない。5年ぐらい経て現れることが多く、気づきにくい。


生活の質を上げるためにも貧血改善は大切だ。
高齢者の栄養に詳しい人間総合科学大学の熊谷修教授らが
秋田県大仙市で約1000人を対象に4年間の食事指導などを実施。
結果、「貧血の人は1人で外出できなくなる危険度が
貧血のない人の2.5倍に高まった」(熊谷教授)。


さらに、栄養状態を見る血清アルブミン値と貧血の状態を比べると
肉や魚、卵などの動物性たんぱく質を毎日食べるようにした後には
アルブミン値の増加に比例し、ヘモグロビン値も改善。


熊谷教授は「老化はたんぱく質が体から抜け出ていく現象。
食事でたんぱく質を補うことが重要で、高齢者に多い野菜と炭水化物中心の
粗食信奉は栄養不足の原因となり、老化を早める」と指摘する。


管理栄養士の吉野さんも
「高齢者は豆腐などあっさりした食事を好みがちだが
たんぱく質は肉や魚といった動物性食品からとってほしい」と強調する。


植物性食品の鉄が非ヘム鉄と呼ぶ吸収しにくい鉄なのに対し
動物性はヘム鉄という吸収しやすい形の鉄分が含まれており
少量でも効果が期待できるからだ。