高齢者こそ肉食を

高齢者こそ肉食を 骨折・貧血予防、老化遅らせる効果も
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO45139610Y2A810C1MZ4001/



食が細くなりがちな高齢者は意識して肉を食べるようにした方がよい。
転倒による骨折や貧血などを防げる。
老化を遅らせる効果も期待でき、専門家は「毎日食べてほしい」と話す。


◆やせ形の寿命短く
中高年にとって、肉のとりすぎはメタボリック症候群につながるという印象が強い。
だが、高齢者だと事情が変わる。


東京都健康長寿医療センター研究所が高齢者を8年間追跡調査したところ
BMIが20以下のやせている高齢者は早く亡くなる傾向にあった。
老化に伴って食が細くなるうえに、栄養の吸収効率が下がる。
野菜ばかり食べていたら、栄養不足になってしまうからだ。


特にたんぱく質が不足すると、足腰の筋力が低下し、転倒しやすくなる。
高齢者の弱った骨は折れる危険性も高く、寝たきりになってしまう。
免疫機能も低下しがちだ。


筋肉や内臓などを作るたんぱく質は20種類のアミノ酸からできている。
トリプトファンやリジン、バリン、メチオニンなど9種類の「必須アミノ酸」は
体内では合成できず、食事で補うしかない。
肉は魚介類とともに必須アミノ酸をバランスよく含んでいる。
一方、植物性食品は大豆を除いて含有量が少ない。


「肉は最も効率的に必須アミノ酸を体内に取り込める」と
日本獣医生命科学大学の西村敏英教授は強調する。
肉に含まれるアミノ酸は加熱調理しても壊れにくい。
体内で吸収される効率も97%と高く、植物性の84%を上回る。


貧血予防にも役立つ。
貧血は若い女性に多いと思われがちだが、高齢者でも10人に1人いるとされる。
特に多いのが鉄分が不足することで起こるタイプだ。


鉄分が多い食品というとホウレンソウを思い浮かべる人が多いが
体内に吸収されにくい構造になっている。
肉に含まれる鉄分は吸収効率が20〜30%と、植物性のものよりも2〜5倍高い。
牛肉の赤身やレバーは鉄分を多く含む。


◆目安は1日100グラム
では、どれくらいの量を食べればよいのか。
獣医生命大の西村教授は「1日に100グラムが目安となる。
最低でも、朝食、昼食、夕食のどこかで食べるようにしてほしい」と話す。


厚生労働省は大人が1日に摂取するたんぱく質の目安を
男性60グラム、女性同50グラムに設定している。
肉100グラムだととりすぎのような気がするが、たんぱく質の量はその2〜3割ほど。
高齢者は吸収効率が落ちており、食べ過ぎは気にしなくてよいという。


高齢者はかむ力が落ちており、弾力のあるステーキやとんかつは食べにくい。
都医療センター研の成田研究員は「ひき肉や薄く切った肉を使えば
加熱調理しても硬くなりにくく食べやすくなる」と助言する。
長く煮込めば軟らかくなるので、シチューなどのメニューを選ぶのも手だ。
肉の線維を包丁で細かく切ることも大切だ。


「脂っぽさがいやだ」という人には
焼き鳥や焼き肉などの網焼き料理がお勧めだ。調理の過程で脂が落ちる。