高齢者の「粗食」に注意

高齢者の「粗食」に注意 肉・脂の不足、老化早める
http://apital.asahi.com/feature/others/2013091700012.html



老化と栄養の関係を研究してきた人間総合科学大学の熊谷修教授は、
高齢者ほど肉などの動物性たんぱく質や脂質を十分に食べるべきだ、と話す。


肉や脂を控えた粗食が健康に良いとされるのは、
心臓病や脳卒中の原因となるメタボ予防のためだ。


だが、「メタボ予防が必要なのは、40〜50歳代の中年期までの話。
60歳を超えてくると、粗食は次第に健康にとって害が大きくなる」
と熊谷教授は指摘する。


高齢者にとって粗食がよくないのは、
「病気よりも老化そのものが問題」となってくるからだ。
肉や脂を控えた食事を続けると、たんぱく質不足になって栄養状態が悪くなり
筋肉や骨の量が減っていくという。


「老化は、人間の体からたんぱく質が抜けて、乾いて、縮んで、ゆがんでいく過程。
たんぱく質不足は、老化を早めることになるんです」


体の老化が進むと、転倒して寝たきりになるリスクが高くなるし、
心臓病などの病気のリスクも高くなることが研究で分かってきた。


「老化を少しでも先延ばしするには、筋肉や骨の材料となるたんぱく質が欠かせません」
熊谷教授が注目したのは、「血清アルブミン」の値だ。


では、実際どのような食事をとれば、
血清アルブミン値を上げ、老化を遅らせられるのか。


熊谷教授は、大切なのは食品の「バラエティー」だとし、
肉や魚、牛乳、油脂類など10の食品群を挙げる。
一日になるべく10品目をまんべんなく食べることを目標にすれば、
面倒なカロリー計算や、バランスを考えなくても、自然に栄養状態は改善するという。


◆腸を動かし、免疫力アップ 医学的にも、高齢者の低栄養は注目されている。
東京大学医学部付属病院手術部の深柄和彦准教授は、
患者の「栄養サポートチーム」の責任者だ。


「入院時に低栄養状態の患者が2〜4割います。
その状態では、病気の経過が良くないうえ、
手術後の合併症リスクが何倍にもなってしまいます」


患者が口から物が食べられない場合、
以前は栄養補給のためには高カロリー輸液を点滴で入れれば良いと考えられていた。
しかし、腸に栄養を届けたときの方が、けがをした患者の患部が膿んだり、
肺炎を起こしたりなどの感染症の発生が少ないことがはっきりしてきたという。


「腸が大切なのは、体のなかで最も大きな免疫組織であるためです。
腸を使わないと働きが落ちて体のバリアー機能が弱くなって、
感染症などにかかりやすくなります」