「魚油」で健康に

脳の活性化、がん・メタボ予防… 「魚油」で健康に
上手な摂取の仕方は
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO59428750X00C13A9MZ4001/





「日本人は魚を中心とした日本食の良さをもっと認識し、積極的に食べるべきだ」。
英インペリアル・カレッジ・ロンドン脳栄養化学研究所の
マイケル・クロフォード所長は今年6月に来日した際に強調した。
魚の脂肪(魚油)に豊富に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)が
脳の働きと密接な関係を持つことをいち早く示した研究者で、
日本人の食習慣に注目してきた。


認知症が改善
DHAやエイコサペンタエン酸(EPA)は
海藻などを食べた魚類が体内で作り蓄積する。
人体では合成されない必須脂肪酸だ。


このため厚労省はDHAとEPAの合計で、
1日あたり1グラム以上の摂取を推奨している。
「(1日100グラム未満では)不足している人が多いはずだが、あまり自覚されていない」。
栄養学などが専門の麻布大学の守口徹教授はこう指摘する。


女子栄養大学の鈴木平光教授らは
千葉県茂原市特別養護老人ホームの高齢者30人(平均年齢78歳)を対象に、
DHA入り魚油カプセルを0.64〜0.8グラムずつ半年間、毎日飲んでもらい、
認知機能のスコアの変化を調べた。
すると6割にあたる18人で数値が改善した。
認知症22人のうちの12人と、健常者8人中6人で改善がみられたという。


◆サプリで補う手も
科学的に効果が証明されているのは胎児・乳幼児期の脳の神経発達についてだ。
順天堂大学清水俊明教授は
「不足すると認知・運動機能の発達が遅れる」と話す。
日本人は欧米人より母乳に含まれるDHAが多い傾向がある。
このためあまり注目されてこなかったが、
ここ20年で日本人の母乳中のDHA濃度は20%減っているという。
清水教授は「魚を食べない妊婦・母親はサプリメントで補ったり、
早産の赤ちゃんにはDHA入りの人工調整乳を使ったりするなど
不足にならないような工夫が必要だ」と指摘する。


このほかDHAでは血液中の中性脂肪を正常値に保つなど
メタボリック(内臓脂肪)症候群の予防に効果があることが実証されつつある。
精神的な不安や恐怖、ストレスの緩和などに効果があることも
麻布大の守口教授の動物実験などからわかってきた。


女子栄養大の鈴木教授によると、
1日のうち魚料理を1回食べれば、DHAを約0.7グラムとれ、
EPAと合わせると約1グラム摂取できる。
効率よく摂取するには、脂の乗った旬の魚を食べるとよい。


DHAやEPAは加熱で減ったり、変質したりしない。
ただ魚を焼くと脂肪分は流れ落ちる。
煮ると煮汁に出るため、調理前に比べて8割程度に落ちる。
フライや空揚げではDHAなどが揚げ油に溶け出すため、元の5〜6割に減る。
刺し身やホイル焼きなどがお勧めだが、
「調理法にこだわらず、メニューを豊富にして毎日食べるほうが大事」(鈴木教授)。
魚が苦手だったり、不足しがちな人はサプリメントなどで補えば、
1グラム以上の摂取も比較的容易だ。