潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎、治療薬増える
日本経済新聞夕刊2011年8月5日付]



潰瘍性大腸炎は1日に何度も下痢や腹痛を繰り返す病気で
症状がいったん落ち着いても再発する例も少なくない。
生活様式の欧米化を背景に患者数は年々増え11万人を超えた。
10〜20代での発症が多く、完治は難しい。

腸内細菌の作用か

潰瘍性大腸炎は国が指定する難病だ。
発症しても命に直結するケースはまれだが
腹痛や下痢、血の混じった便が出るなどが主な症状。
トイレに何度も駆け込まなくてはならないなどQOLの低下を招きやすい。
同じ炎症性腸疾患であるクローン病
小腸や大腸など様々な消化管がただれてしまうのに対し
潰瘍性大腸炎は大腸に炎症やただれが起こる。


病気の原因は不明だが、病原体から身を守る免疫のバランスが崩れ
大腸に生息する細菌なども作用し炎症などを繰り返すと推測されている。
関節リウマチなどの膠原病とは区別している。
患者の男女比は半々で、欧米人の発症頻度は日本の5〜10倍。
動物性たんぱく質や脂肪を多く摂取する食生活や、ストレスが影響するとの指摘もある。
東京慈恵会医科大学付属柏病院の大草敏史教授は
「ほぼ同じものを食べている親子や兄弟姉妹がともに発症する例は少なく
基本的に遺伝は心配いらない」と話す。


治療はまず薬。

「やけどに似た状態になった大腸をいち早くきれいな状態に戻すのが大切」
横浜市立大学付属市民総合医療センターの国崎玲子准教授は指摘する。
ただ、薬で効果があるのは患者の約6〜7割にとどまる。
最も使われる薬は「アミノサリチル酸製剤」。
軽症なら炎症を鎮め再発も予防できる。
効果が不十分な時は免疫を調節する薬も使われる。
それでも抑えきれないときはステロイド剤などを用いる。
2009年から「タクロリムス」
2010年には「抗TNFα抗体」も使えるようになった。
ほかにも選択肢はある。
炎症のもととなっている白血球などを取り除く治療や強い免疫調節剤などだ。
除去療法は透析と似ており、血液を体外の装置に循環させ過剰に働く白血球だけを除く。


大草教授は独自の治療も実施している。
患者の4人に3人は腸内に「バリウム菌」を持つのに注目。
3つの薬を併用してこの菌を除去する。
ステロイドが効きにくかったり量を減らすと再発したりする患者に
2週間服用してもらうと、3カ月後に約6割で炎症やただれが軽減・消失した。
落ち着いた状態が3年続いた患者も少なくなかった。
「患者の大腸粘膜には通常の100倍近く菌がいる。
それを除けば病気の原因を取り除ける」と大草教授は話す。


http://www.nikkei.com/life/health/article/g=96958A96889DE1E1E6EBE0E1EBE2E2E6E2EAE0E2E3E3979EE382E2E3;p=9694E0E4E3E0E0E2E2EBE1E3E2E3