赤ワインは寿命を延ばす、ってホント?
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO08639790R21C16A0000000?channel=DF130120166093
■注目の「レスベラトロール」の効果とは
ボルドー大学中央病院の研究チームは、65歳以上の3777名に対して、
死亡率、認知症、アルツハイマー症のリスクと、飲酒量の関係を3年間にわたり調査した。
ワインを毎日3〜4杯(375〜500ml)飲んでいる人は、飲んでいない人に比べ、
認知症の発症リスクが約5分の1、アルツハイマー症の発症リスクが4分の1、
死亡率が約30%低下していたという(Rev. Neurol. (Paris): 153(3),185-192,1997)。
1999年には、ミラノ大学の研究チームが、
「毎日グラス1杯半のワインを飲み続けると、記憶力の回復に効果があり、
アルツハイマー病などの神経細胞の変性が原因とされる病気に
かかりにくくなる可能性がある」と発表した。
これは、レスベラトロールが外界刺激を伝達する酵素「MAPキナーゼ」を7倍活性化し、
脳の細胞同士を結び付ける作用をするためだと報告している
(M.Miloso,A.A.E.Bertelli, et al.:Neurosci. Lett.,264,141-144,1999)。
■赤ワインが寿命を延ばす?
レスベラトロールは、
寿命を延ばす働きがあるとされるサーチュイン遺伝子を活性化するという報告もある。
「サーチュイン遺伝子は、抗老化遺伝子と呼ばれるもので、飢餓、
カロリー制限により活性化されるといわれています。
しかし、レスベラトロールを摂取すると、カロリー制限をしなくても、
サーチュイン遺伝子が活性化することが明らかになってきたのです」(佐藤教授)
2000年代にはレスベラトロールの寿命を延ばす効果についての論文が相次いだ。
「当初は、酵母の寿命を延ばすという報告があり、
その後、多細胞動物、線虫、小魚などの報告が続きました。そして2006年には、
マウスの寿命がレスベラトロールによって延びるという論文が発表されました
(J.A. Baur, D.A. Sinclair et al.:Nature 444,337-342,2006)。
これは高カロリーのエサを与えるとマウスは短命になるが、
レスベラトロールを同時に与えると普通食と同様に生存したという報告です」(佐藤教授)
「ただし、2008年には、老化や肥満による障害予防には
レスベラトロールは有効だが、健常な人の寿命は延ばさないという報告がされています
(K.J. Pearson,J.A.Baur,K.N.Lewis et al.:Cell Metabolism,8,157-168,2008)。
レスベラトロールは健康な人に投与することでより健康が増進されるというものではなく、
健康上何かしら問題を抱えている人に効くのです」(佐藤教授)
■レスベラトロールはピノ・ノワールに多い!
これだけの効果があるとなると、
どの品種にレスベラトロールが多く含まれているのかが気になるところだ。
佐藤教授によると、ワインの品種の中でこの成分が多いのが、
「ピノ・ノワール」(Pinot Noir)なのだという。
実際、佐藤教授は、ワインに含まれているレスベラトロールの量を計測している。
「白ワインには平均約0.1mg/L、
赤ワインには1〜10mg/Lのレスベラトロールが含まれています。
赤ワインの中では、ピノ・ノワールに多く含まれています」(佐藤教授)
「ピノ・ノワールは果皮が薄いという特徴があります。
カビが生えるとすぐ病気になるので、
ブドウは自分を守るために抗カビ成分を一生懸命作ります。
この抗カビの役割を担う成分が、レスベラトロールなのです。
皮が厚くカビに強いカベルネ・ソーヴィニヨンと比べるとその含有量は10倍ほど違います。
やはりカベルネ・ソーヴィニヨンより皮が薄いメルローも、
カベルネの2〜3倍のレスベラトロールが含まれています」(佐藤教授)
ピノ・ノワールは、フランス・ブルゴーニュ地方で生産される赤ワインの主原料。
ブルゴーニュ産の赤ワインだったらほぼ、ピノ・ノワールだと考えてよい
(※ボージョレ地区はガメイ種)。
有名なロマネ・コンティもピノ・ノワールを使ったワインだ。
ピノ・ノワールは、世界的に見ると
カベルネ・ソーヴィニヨンほど広く栽培されていないものの、
ニュージーランドや南アフリカ、それにカリフォルニア、チリなどでも栽培されている。
ラベルに「Pinot Noir」と書いてあるものを選べばいい。