センノシドの漫然投与は禁物

頑固な慢性機能性便秘への処方
センノシドの漫然投与は禁物 弱い下剤に替え離脱目指す
岡崎啓介氏(岡崎外科消化器肛門クリニック)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201408/537928.html&di=1



患者は長年、慢性機能性便秘に悩まされていた59歳女性。
他院でプルゼニド(一般名センノシド)を処方され、
週1、2回頓用し排便することが習慣となっていた。
私は、刺激性下剤の中でも効果の弱いビーマス配合錠(DSS・カサンスラノール)と
マグミット(酸化マグネシウム)を毎食後に服用する処方に切り替え、
2週間後の再診を促した。


◆定期服用が排便リズム引き出す
アントラキノン系薬剤であるセンノシドは、臨床で多用されている刺激性下剤の1つだが、
現実には、この処方で排便がコントロールできている例はほとんどない。
多くの場合、センノシド服用後に下痢を来した後、無排便状態が続き、
数日して腹部膨満感から再び同剤を頓用するというサイクルを繰り返しているにすぎない。
つまり効果が強過ぎるのである。


私たち肛門外科医にとっては、症状の増悪や術後の大出血・再発を防ぐため、
適切な排便コントロールが不可欠である。
私はこれまで、大腸通過時間を指標とした刺激性下剤の使い方や、
経口便秘薬に含まれる刺激性成分について検討してきた


冒頭の症例のように、刺激性下剤を長年使っている場合にお勧めしたいのが、
弱い刺激性下剤への切り替えである。
便の硬さを調整するため、マグミットも併せて処方することが多い。


本来は刺激性下剤を一切中止し、マグミットのみ処方したいところだが、
刺激性下剤常用者の多くはそれだけの効果で満足しない。
治療継続のためにも、ビーマス配合錠のような弱い刺激性下剤を選択する。
ちなみに、ビーマス配合錠に含まれる刺激成分(カサンスラノール15mg)の強さは、
プルゼニド錠(センノシドA・B12mg)の10分の1と推定される。


処方のポイントは、頓用ではなく毎日服用させること。
弱い下剤をじわじわ効かせつつ生活習慣を改善することで、
自らの排便リズムを引き出すのである。
月1回程度定期通院させ、排便回数と便性状を確認。
回数が多ければビーマス配合錠を、軟便傾向ならマグミットを、
それぞれ1日2回に減量するなど調整する。
また、生活が不規則な患者にはラックビーなどの整腸剤を、
排出機能低下例にはガスモチン(モサプリド)を処方することもある。


排便状況を見ながらビーマス配合錠の使用量を減らし、
1日1、2錠でコントロールできるようになったら、頓用処方に切り替える。
年単位の長期戦ではあるが、最終的には下剤から離脱できるケースも少なくない。


◆ピコスルファートは朝晩投与
これまで刺激性下剤やそれを含有した健康食品
(お茶やサプリメントなど)を使用したことがなく、
「排便が週1、2回で硬便」という患者であれば(20歳代の若い女性に多い)、
マグミット1日3錠(3回)の処方から始め、排便習慣ができたら減量を検討する。


マグミットだけで効果が不十分であれば、
アントラキノン系薬剤を避けてラキソベロン(ピコスルファート)を用いる。
同剤は1日1回投与が一般的だが、経験上、1日量を朝晩に分け、
食事と同じタイミングで服用した方がよく効く印象である。