慢性便秘治療における漢方薬の使い方のコツ

2013年3月22日
第99回日本消化器病学会総会 ランチョンセミナー
慢性便秘治療における漢方薬の使い方のコツ
中島 淳 先生(横浜市立大学附属病院 消化器内科 教授)
http://www.kampo-s.jp/magazine2/192/index2.htm





慢性便秘は原発性と各種疾患や薬物治療などによる続発性とに大別され、
原発性の便秘は腸管拡張なしと、
腸管拡張あり(慢性偽性腸閉塞症、巨大結腸症)に分類される。
腸管拡張なしは、
1)通過時間遅延型、
2)通過時間正常型、
3)排泄障害型に分類され、
1)と2)の両者は、3)とそれぞれオーバーラップする。


慢性便秘治療の基本は、
1.便性状の正常化、
2.排便回数の是正(刺激性下剤の適正使用)、
3.排便困難症の改善、4.便秘周辺症状の改善である。


便性状の正常化とは、排便が困難な小さくて硬い便を、
排便が容易となる大きく柔らかい便にすることである。
排便回数の是正については大腸刺激性下剤を使用するが、
あくまで頓用とすべきであり、
連用すると耐性、習慣性、依存性が生じて快便は得られない。


刺激性下剤は用量調節が難しく、
さらに連用による習慣性・耐性によるタキフィラキシーや、
便秘関連症状(腹部膨満、腹痛)などへの対応が困難であり、
薬剤の選択肢が少ないことなどから患者満足度は低い。


漢方薬は慢性便秘に対する有用性が認められ、
患者の満足度の向上に大きな期待がもてる。


漢方薬には大黄の主成分であり、
腹部膨満感や腹痛、便秘に奏効するセンノシドの含量が多いものから
少ないものまで種類が多く、さらに複数の生薬が配合されており
耐性、習慣性などが生じにくく腹部症状が緩和される。


漢方薬による治療のポイントを以下のようにまとめる。


1. 便性状の正常化:
酸化マグネシウム(便が硬くなるのを防ぐ)。
硬い便には防風通聖散を使用する。


2. 排便回数の是正:
刺激性下剤の適正使用(あくまでもレスキューとして使用する)、
センノシドが含有される大黄を構成生薬とする漢方薬である
防風通聖散、桂枝加芍薬大黄湯、麻子仁丸、大黄甘草湯など
がラインアップされているので、病態によって選択する。


3. 排便困難症の改善:
まずは便性状の正常化を図り、麻子仁丸を使用する。


4. 便秘周辺症状の改善:
腹痛には大建中湯(大黄を含まない)、
腹部膨満には桂枝加芍薬湯(大黄を含まない)
桂枝加芍薬大黄湯を使用する。


慢性便秘の周辺症状である下腹部痛や、
腹部手術後などによる下腹部の疼痛には大建中湯が奏効する。