ACE阻害薬とARB、併用注意に

厚労省が添付文書改訂を指示、腎機能悪化・高カリウム血症の恐れ
ACE阻害薬とARB、ついに併用注意に
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201406/536865.html
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厚生労働省は6月3日、ACE阻害薬とARBについて、
両剤の併用に関する注意喚起を行うよう添付文書の改訂を製薬会社に指示した。


PMDAが配信した「使用上の注意の改訂指示(医薬品)」によれば、両剤を併用すると
「腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧を起こすおそれがある」からであり、
作用機序としては
「併用によりレニン-アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある」という。


改訂の理由としてPMDAは、
アンジオテンシン変換酵素阻害剤及びアンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤を併用した場合の
有効性及び安全性の検討を目的としたメタ解析において、
両剤併用群では単剤投与群と比較して
腎機能障害、高カリウム血症、低血圧のリスクが有意に増加した
との文献が報告されたことから、専門委員の意見も踏まえた調査の結果、
改訂することが適切と判断した」としている。


従来、収縮機能不全による心不全に対して、
レニン-アンジオテンシン(RA)系の抑制が有効であるとされ
ACE阻害薬またはARBが使用されている。
その上で、RA系をさらに抑制して心不全の予後を改善させることを目的に、
両剤の併用が行われる場合があった。
併用により心不全患者の死亡リスクが有意に低下するとの臨床試験結果
(Val-HeFT試験、CHARM試験など)が発表されたことも影響していたと思われる。


しかしその後、両剤の併用による副作用報告が集積されたほか、
大規模試験でも否定的な結果が報告され、現在では併用が推奨されなくなった。


一部の専門医の間で、蛋白尿が非常に多い場合などに限定して使用される以外は、
通常は行われない。
日本腎臓学会「CKD診療ガイド2012」や
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」などにおいても、
両剤の併用に関しては慎重な記載にとどまる。


以下、ガイドラインの該当部分を抜粋した。


「顕性アルブミン尿・高度蛋白尿症例においてARBとACE阻害薬が併用される場合があり、
尿中アルブミン・尿蛋白減少効果に優れることが報告されている。
しかし、併用する場合にはeGFRの低下や、
血清K上昇、および過剰降圧に十分注意する必要があり、
両者の併用投与は原則として腎臓・高血圧専門医によってなされるべきである」
(CKD診療ガイド2012)


「ACE阻害薬とARBとの併用は,単独投与よりも尿蛋白を減少させるという
メタアナリシスの報告もあるが、ONTARGETでは、ACE阻害薬+ARB併用群では
単独投与群よりも尿蛋白が減少するものの、透析導入、クレアチニン値の倍増、
死亡はむしろ悪化するという結果であり、一般的にこの組み合わせの併用は推奨されない。
併用する場合には少量の併用から開始し、注意深い観察が必要である」
(高血圧治療ガイドライン2014)