農水産業、技術に活路

水産業、技術に活路 海外市場開拓へ種まき
サカタのタネ:野菜、病気に強く
岡山理科大:砂漠でも魚養殖
http://www.nikkei.com/article/DGKDASDJ25018_W4A320C1EA2000/


農業や漁業の現場で日本の独自技術を生かして海外市場を目指す動きが広がってきた。
植物工場や品種改良、魚の養殖などで新技術の開発が相次ぐ。
国内市場の縮小やTPPによる市場開放圧力にさらされる農水産業
国内で存在感を高めつつ海外をにらむ企業や
大学の取り組みに反転攻勢のヒントが数多く潜んでいる。


カイワレ大根や豆苗、スプラウト(新芽)などを生産し、
全国に販売している村上農園(広島市)。
本来、野菜にごく微量しか含まれない成分を
品種改良や特殊な栽培技術で高い含有量にした機能性野菜の販売で業績を伸ばしている。


主力商品で発芽3日目のブロッコリーの新芽「ブロッコリースーパースプラウト」。
体の抗酸化作用を高めるとされる「スルフォラファン」という成分を
成熟ブロッコリーの約20倍含む。
店頭価格は1パック250円前後と通常のカイワレ大根の4倍以上だが、販売は好調。
今年2月の販売量が前年同月比5割増、3月も5割増のペースを維持している。


施設の中で栽培できる発芽野菜は
「モンゴルやロシアなど野菜を作りづらい気候の国から
生産したいとの声が多く届いている」(同社)。
海外へ生産技術を提供する計画もある。


サカタのタネは2015年春に
黄化葉巻病という新しい病気に強いトマト「麗旬」を発売する。
黄化葉巻病はかかるとトマトの株全体が縮んで収穫量が低下する病気で、
産地に深刻な被害をもたらしている。
「麗旬」は病気に対する強さと食味の良さ、高い収穫量を兼ね備えた品種だ。


表皮にイボイボのないキュウリ、台風が来ても倒れないトウモロコシ……。
同社は画期的な商品を続々と発売してきた。
開発拠点の一つである静岡県掛川市の郊外。
東京ドーム7つ分の農地が広がる。
軽トラックや自転車が行き交い、ひとつの農村のようだ。


新品種の開発は、ひとつの花の花粉を別の花のめしべに手作業でつける地道な仕事だ。
年間千種を開発しても99%以上は失敗作。
わずかな成功例も、試験栽培などを経て商品として完成するには最低10年かかる。


欧米で主流の遺伝子組み換えなら時間や労力を減らせるが
「世界にはアジアなど遺伝子組み換えを敬遠する市場があり、
日本のタネに価値が生まれる」(SMBC日興証券の村上貴史シニアアナリスト)。


JR岡山駅には海水魚と淡水魚が一緒に泳ぐ不思議な水槽がある。
使われるのは岡山理科大学が開発した「好適環境水」。
工学部の山本俊政准教授は
「ナトリウムなど3種の成分があれば海水魚は生きられる」と話す。


必要な成分だけを真水に加えればトラフグやクエ、クルマエビを養殖できる。
循環装置を使えば水が少ない砂漠でも魚が育つ。
東南アジアや中東からも視察団が訪れる。