エストラダーム

エストロゲン貼付剤に併用された経口剤
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/ より一部改変

日経DIクイズ 服薬指導・実践篇 5

日経DIクイズ 服薬指導・実践篇 5


◆Question

60歳女性
今月の初めから、ホルモン補充療法を始めました。
先生は、「効果が現れるには時間がかかるので、しばらく続けてください」
とおっしゃっていました。でも、今日の処方せんでは
前回いただいた飲み薬が出ていないようですが、飲まなくてもよいのでしょうか。
それから貼り薬は、毎回違う場所に貼るように説明書に書いてありますが
下腹部と臀部だけでは、そろそろ貼る場所がなくなりそうです。
おなかとお尻以外の場所に貼っても構いませんか。


処方せん
エストラダームM 8枚 1回1枚貼付(2日毎に貼り替え)
※10日前の処方せんでは、エストラダームM6枚に加え
 プロベラ(2.5mg)が1日1錠、朝食後で、12日分処方されていた。

◆服薬指導

エストラダームは、エストロゲンを補うことによって
閉経後の不快な症状を改善したり、骨粗鬆症を治すために使われるお薬です。
ただ、エストロゲンを体に補っていると
体の中のホルモンのバランスが悪くなってしまい
子宮内膜が増殖し過ぎてしまう、といった副作用が起こる場合があります。
それを防ぐために、1カ月のうち12日間だけ、プロベラ
エストロゲンとは別の黄体ホルモンを補います。
ですので、今回飲み薬が出ていないことは問題ありません。
このような使い方が、一般的なお薬ですので
次回の診察の時にはまた飲み薬が出ることになると思います。
それから、貼り薬を貼る場所ですが
いつも同じ場所に貼り続けて、皮膚が赤くなったり
かぶれてしまうようなことがない限り
貼る場所が、以前に貼ったことのある場所と重なってしまっても問題ありません。
むしろ、下腹部と臀部以外に貼ることは避けるようにしてください。
それ以外の背中や胸などに貼ると、薬が吸収され過ぎたり
副作用が起きやすくなったりしますので、お気をつけください。

◆解説

 エストラダームM(一般名:エストラジオール)は2002年に適応追加が認められ、それまでの更年期症状に加えて新たに閉経後骨粗鬆症にも使用できるようになった。
閉経後骨粗鬆症は、閉経後のエストロゲン減少によって骨代謝のバランスが崩れ、骨量が減少することで発症する。同剤を使用してエストロゲンを補充することにより、骨量増加効果を期待できる。

 エストラダームMは、2日ごとに貼り替えて使用する。一般に、エストロゲン製剤の投与パターンとしては、休薬期間をおかない「連続投与法」と、3週間連続して貼付した後に1週間の休薬期間を設ける「間歇投与法」の2種類があるが、エストラダームMを閉経後骨粗鬆症の治療に使用する場合には、連続投与が一般的なようである。

 連続投与する場合には、エストロゲンの長期連用により子宮内膜の増殖が起き、子宮内膜癌を誘発する可能性があることから、その予防のために黄体ホルモンを併用する。この黄体ホルモンの併用方法にも複数あり、1カ月に12日間、黄体ホルモンを併用する「周期的投与法」と、黄体ホルモンを連日併用する「持続併用投与法」のどちらかを選択するのが一般的である。

 貼付部位を変更するのは、皮膚のかぶれを防ぐためであり、必ずしも毎回違う場所に貼る必要はない。また同剤は、背中に貼付した場合、貼付後のエストラジオールの血中濃度時間曲線下面積(AUC)が、下腹部貼付時に比べて有意に高くなることがわかっている。また、添付文書には、「胸部に貼付しないこと」とも記載されている。これは同剤が乳房局所の細胞に高濃度で到達すると、乳房細胞の増殖が起きる恐れがあるためである。さらに、摩擦ではがれないように、ベルト部分への貼付も避けた方がよい。