NEJMがトランプを批判

『New England Journal of Medicine』がトランプ政権を痛烈に批判

https://medical-tribune.co.jp/



大統領選挙を来月(11月)に控える中、
『New England Journal of Medicine』が
COVID-19に対する現政権の対応を
批判する異例ともいえるエディトリアルを掲載した。

Dying in a Leadership Vacuum」と題した文章の中で、
NEJMは「十分な警告があったにもかかわらず、
米国はほぼ全てのステップで対応に失敗した」と指摘。

「専門家の意見を無視し、侮蔑する指導者らによって
世界をリードする米疾病対策センター(CDC)は実効性を失い、
真実を覆い隠し公然と嘘を流布する"オピニオンリーダー"や
"知ったかぶり"が影響力を強めている」と痛烈に批判している。

なお、NEJMが政権を批判するエディトリアルを掲載するのは、
1812年の創刊以来初のことだという。

国民を死に至らしめた米国のリーダーシップ

世界中で危機を引き起こしたCOVID-19の流行により、
各国の首脳はリーダーシップを試されることになった。
「その試練に米国は失敗した」とNEJMは述べている。

米国のCOVID-19患者とそれによる死亡数は世界の中でも突出して多い。
厳格な検疫と隔離を行った中国の事例があったにもかかわらず、
効果的な検査を実施せず、医療従事者らに
基本的な個人用防護具(PPE)さえ提供することのできなかった
初期対応の悪さが指摘されている。

また、米国では検疫と隔離の措置が遅れ、
社会的距離の確保についての規制は多くの地域で徹底されず、
効果が現れるよりも早く緩和された。
さらに、マスクは効果的な感染拡大予防手段ではなく
政治的なツールであるという指導者らの発言により、
多くの人々がマスクを着用しておらず、COVID-19の拡大を防ぐ上で
効果的かつシンプルな介入策が実施されていないとNEJMは訴えている。

「現政権を支持すべきでない」と呼びかけ

世界最先端の生物医学研究システムを擁する米国がこうした事態に陥ったのは、
「われわれの指導者らが公衆衛生や健康政策、基礎生物学の専門家らを軽視し、
その意見を無視することを選択したからだ」とNEJMは指摘している。

世界の保健政策をリードするCDCは実効性のある対策を打ち出せず、
ワクチン開発において重要な役割を果たしてきた米国立衛生研究所(NIH)は
政府の極めて重要な意思決定プロセスから除外されており、
米食品医薬品局(FDA)は現政権からの圧力に屈しているように見えるとし、
現政権は科学的根拠に基づく専門家の意見ではなく、
「真実を覆い隠し公然と嘘を流布する"オピニオンリーダー"や
"知ったかぶり"に目を向けている」と強く批判している。

その上でエディトリアルの中では
「不適切な政策によって、少なくとも数万人もの米国民が命を落としている」
と述べており、現在の指導者らを「危険なほど無能である」と厳しく断じている。

NEJMは、来月にさし迫った大統領選に関しても
「さらに何千人以上もの国民を死に至らしめかねない現政権を支持すべきでない」
とまで呼びかけており、
創刊から200年を超える歴史の中で初となる政権批判を展開する事態となっている。