大人の発達障害

「大人の発達障害」どう対処? 
昭和大学附属烏山病院病院長 岩波明先生

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO24416840Y7A201C1000000?channel=DF130120166093


発達障害とは、
「生まれつき脳機能に何らかの偏りがあり、
精神的あるいは行動的な特有の症状を示すもの」と定義されています。
その症状は実に多様で、分類もさまざまです。
大人の発達障害として特に多く見られるのは図の2つです。
1つめは、「自閉症スペクトラム障害[注1]」
(Autism Spectrum Disorder、以下ASD)、
そしてもう1つが「注意欠如多動性障害」
(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder、以下ADHD)です。


[注1] スペクトラム(Spectrum)は、
連続体、分布範囲という意味の英語。
軽症から重症まで、多様な症状が重なり合う連続体だとする考え方。


ASDは、社会的コミュニケーションの障害を生じる発達障害の総称で、
いわゆる昔ながらの「自閉症」と、
アスペルガー症候群」などが含まれます。
ASDの有病率は、
小児も含めて100人に1人いるかどうか、0.5〜1%と推測されています。
大きな特徴としては、
対人関係や社会性における不適応、
俗にいう「空気が読めない」という症状です。
人との距離感がつかめず、人付き合いが苦手で、
生涯友人が1人もいないという人も珍しくありません。


特定の物事に極端に強いこだわりを持つこともASDの特徴です。
例えば子どもの頃、
男の子なら電車に関心を持つ子が多いのですが、
ASDの子どもは、好きな電車を見つけると、
何時間でもそこに居続けるという執着を示します。
この傾向は、物だけでなく行動も同様で、
いつもの行動パターン通りに物事が進まないと気が済まないなど、
強いこだわりがあります。
興味のあることに対しての集中力はずば抜けて高いことも知られています。
ASDの代表例であるアスペルガー症候群は、対人関係が苦手で、
他人の感情や非言語によるメッセージをくみ取ることが困難な発達障害です。
知的能力や言語発達の障害を伴わないので、
「ちょっと変わった人」と思われることが多いのが特徴です。


一方、ADHDは、集中力や注意力の障害、衝動性、
多動性(思い立つと後先かまわずすぐに行動に出てしまう)を特徴とする障害で、
そのために、社会的な活動や学業の機能に支障をきたします。
発達障害といえばASDのほうがよく知られていますが、
ADHDの有病率は3〜5%と、ASDの約5倍に上ります。


発達障害は生まれつきの障害なので、
大人になって新たに発症することはありません。
大人になってから発達障害と診断されるのは、
大人になるまで気がつかなかったということです。


子どもの頃は成長過程の一つと受け止められ、
周囲もあまり気にしていなかったのに、
卒業・就職し、社会に出て仕事を始めるようになってから不適応が目立ち始め、
自分自身も周囲も違和感を覚えて受診に至ることが多いです。
子どもの頃は周りの協力も得て何とかこなせたことも、
大人になると誰も助けてくれませんので、
仕事上でトラブルになったり、能力を否定されることが重なり、
ストレスレベルが一気に上がるのです。